狂気ってる? 即戦力採用
魔王城の城門を、巨大な爆鳴と共に銀の軍勢が突き破った。
「正義の鉄槌を下しに来たぞ!」と叫ぶ隣国の聖騎士団。その先頭に立つのは、かつてこの魔王城で魔王の捕虜として捕らわれる予定だった、隣国最強の女聖騎士・クラリスだ。
「……ふぅん。配信を見て駆けつけたか。いいよ、エリスやセレナたちの横に並べる『素材』が欲しかったところだ」
社員共にクラリスを通すよう命じる。
バックの騎士団は適当にあしらわせておく。
クラリスが早々に到着した。
俺は玉座に座ったまま、カメラ(魔道具)を彼女に向けさせた。全世界が、この「正義の逆転劇」を固唾を呑んで見守っている。
クラリスは、俺の足元に転がっている無残な姿の聖女エリスや、エプロン姿で震えている魔王を一瞥した。そして、ゆっくりと剣を収め、俺の前に歩み寄る。
「……素晴らしい」
彼女の口から漏れたのは、怒号ではなく、陶酔しきった溜息だった。
「なっ……?」
エリスが絶望的な声を上げる。だが、クラリスは彼女をゴミを見るような目で見下ろし、俺の前に跪いた。
「勇者様。……いいえ、我が主。私はずっと、この退屈な世界を、あなたのようになぞり、踏みにじり、色鮮やかな『絶望』で塗りつぶしてくれる方を待っておりました」
「……は?」
俺は思わず、持っていたマイクを落としそうになった。
チート『絶望の収穫』が、彼女から放たれる膨大なエネルギーを感知する。だが、それは**「絶望」ではなく、ねっとりとした「狂喜」と「崇拝」**だった。
「私は聖騎士として、多くの悪を斬ってきました。でも、その度に思っていたのです。『なぜ、あんなに美しく泣き叫ぶ人間を殺さなきゃいけないの? もっと長く、もっと丁寧に壊すべきなのに』と」
クラリスは顔を上げ、頬を赤らめて俺を見つめた。その瞳は完全にイッていた。
「あなたの『配信』を見て、確信しました。これこそが私の求めていた『合法』という名の蹂躙! あなたの足元で、共に世界を腐らせる……ああ、想像しただけで私の聖なる血が沸騰しそうです!」
「おいおい、待て。お前、同業者かよ」
俺はソファに深く腰掛け、クラリスを見つめた。
絶望を喰う俺にとって、絶望を「快楽」として共有しようとする彼女は、ある意味で最も食い合わせが悪い。だが、彼女が率いてきた軍勢を見て、俺はニヤリと笑った。
適当にあしらわせている、彼女が連れてきた騎士団の連中は、全員が恐怖に顔を歪めている。彼らは「正義」を信じてついてきたのに、リーダーが真っ先に敵に寝返ったのだ。これこそが極上の絶望のタネ。




