新しい玩具
魔王城の謁見の間。俺は悠々とソファに座り、魔族のスタッフが持つマイクに向かって語りかける。目の前には巨大な魔法スクリーン。そこには、俺の言葉に戦慄する王都の民衆の姿が映し出されている。
「今日のゲストは、なんと豪華二本立てだ。エルフの女王セレナと、ドワーフの工匠姫ガルドナ」
画面が切り替わり、憔悴しきったセレナとガルドの姿が映し出される。彼女たちの首には、それぞれ「故郷の森の所有権」と「部族の聖具」を担保とした枷がつけられていた。
「さて、本日の企画は『尊厳破壊オークション』 ゲストの連中には、一番屈辱的な事をやってもらう。もちろん、ひとつじゃない。視聴者の皆さんは、ただ見たいものを言うだけでいい。言えば言うほど、世界は平和になり、君達の税金も安くなる」
俺の言葉に、二人は絶叫した。
「貴様、我らを何と……!」
「屈辱を世界に晒せというのか!?」
「嫌なら故郷が消滅するけど、どっちがいい? ほら、早くしろよ。画面の向こうで、お前らのせいで飢えているガキどもがいるぞ?」
俺はにこやかに圧をかける。
画面には、「聖女が女王の靴を舐める!」や「姫が魔族の膝に乗って──ピーーー──!」など、民衆の醜い欲望が飛び交っていた。彼らはもう、自分たちの罪悪感すらも燃料に変え、他人の絶望を消費する側に回っていた。はははは、前世のネットと同じだ。さあ、もっと、もっと、欲望を曝け出せ。守るべき世界など、もう無いと思わせろ。
エリスは既に半ば廃人となり、──ピーーー──となった、ただ虚ろな目でその光景を見つめている。彼女の心は、限界を超えて壊れ、最早何も感じられない状態だった。その顔がまた、本当に愛おしい。それとも少し激し過ぎただけか?
「さあ、一番人気は『女王と姫が、互いの故郷を侮辱する言葉を叫びながら、魔族に──ピーーーーー──のようだな。
おい、始めろ。
俺の指示通り始めた。
互いの故郷を罵倒する言葉を叫び、ピーーー、ピーーー、ピーーーーー、ピーーーーー、ピーーー、ピーーーーー。もはや人間としての尊厳を完全に失った姿を、民衆へと配信する。
画面の向こうでは、民衆が「もっとやれ!」と歓喜の声を上げていた。
世界は、完璧な「絶望」で満たされたようだ。
後はお前達の好きに続けろ。
まんざらでもない魔族達が、味わった事のない快楽を覚え、楽しんでいる。




