牢獄の誇り高き在庫
配信を魔族(新入社員)に任せ、俺は魔王城のさらに深部、地下監獄へと向かった。
魔王が「いつか食おう」あるいは「交渉の道具にしよう」と秘蔵していた、世界最高級の「素材」たちがそこに眠っているはずだ。ワインのように芳しい香りと癒される熟成された絶望の味を楽しめそうだ。
一人は、深い森の守護者であり、数百年を生きるエルフの女王・セレナ。
もう一人は、鋼の意志を持つと言われる、ドワーフの工匠姫・ガルドナ。
二人は魔力封じの枷に繋がれ、衰弱しながらも、その瞳にはまだ「誇り」の光を宿していた。
「……魔王か? いや、人間……? 貴様、何者だ」強気な女も好きだ。味変には悪くない物質だからな。
エルフの女王セレナが、枯れた声で俺を睨みつける。その気高い視線。ああ、たまらない。その高いプライドを、合法という名の重機で更地にする快感を想像するだけで、俺の心は躍る。踊り狂う。ハハハ。
「やあ、初めまして。君たちの新しい『雇い主』だよ」
俺は二人の前にしゃがみ込み、最新の「中継映像」を見せてやった。
そこには、精神が崩壊しかけながら、屈強な魔族たちに囲まれ、──ピーーーーー──をさせされているエリスの姿が映っていた。
「なっ……聖女様が!? 我々の希望たる彼女が、なぜこれほど無残な……!」
「おのれ……貴様、何をした……!」
二人が激昂する。素晴らしい〜。嗚呼、怒りは絶望への近道だ。
俺はエルフの女王の髪を掴み、無理やり画面を見せつけた。
「セレナ。お前が俺に従わなければ、お前の愛する『世界樹の森』を、魔王軍の軍事演習場として合法的に払い下げる。そしてガルドナ。お前が拒否すれば、お前の部族が代々守ってきた『古の金槌』を、俺専用の特注くるみ割り人形に改造して、実演販売してやる。」
「……き、貴様……正気か……!?」
「正気だよ。前世で理不尽なリストラをしてきた俺からすれば、これくらい『合理的な人員配置』だ。さあ、選べ。お前たちの『誇り』を捨てて俺の玩具になるか、お前たちの『故郷』を灰にするか。をな」
俺は二人の耳元で、エリスの時よりもさらに洗練された、逃げ場のない「究極の選択」を突きつけた。
二人の瞳から、ゆっくりと「誇り」が剥がれ落ち、代わりに底知れぬ「恐怖」と「絶望」が染み渡っていく。
「……ふふ、あはははは! 聖女に女王に姫君! 異世界のオールスターで、『地獄のバラエティ番組』が作れるな! まあ、前世では栄光にしがみつく哀れなオワコンだが」
魔王城の地下に、狂った勇者の笑い声と、新たな犠牲者たちの嗚咽が響き渡った。




