頑張って、エリスちゃん
俺はエリスの耳元で、さらに不快な提案を囁いた。
「明日から、お前の故郷に『聖女様のライブ中継』を俺のチート魔法で届けてやる。お前が俺の──ピーーーー──、そして魔族たちに奉仕し、絶望に顔を歪める姿を、街の全員に見せてやるんだ。『お前らが税金を安くしてくれと頼んだ結果、聖女様はこうなりました』って、馬鹿共でも分かる字幕付きでな」
エリスは叫び声を上げ、その場に崩れ落ちた。
自分の犠牲によって街が救われたことを、街の人々が「罪悪感」として一生背負い続ける。そして、その罪悪感がまた新たな絶望を生み、俺を太らせる。
「最高だ……。最高だよ、エリス。お前の人生は、もう修復不可能だ。……でも安心しろ。俺が、一生お前を使い倒してやるからな」
「さあ、エリス。カメラ(魔道具)に向かって笑え。お前の故郷のみんなが、固唾を呑んで見守ってるぞ」
魔王城の謁見の間。そこには、俺が急遽、社員共の魔族に設置させた「巨大魔法スクリーン」と同期する魔道具が設置されていた。
今、この瞬間、街の広場では、数千人の民衆が絶望的な表情でスクリーンを見上げている。
画面に映し出されているのは、かつての慈愛の象徴・聖女エリスが、薄汚れた服で俺の足元に跪き、震える手で俺の靴を磨いている姿だ。
「……あ……あぁ……」
エリスは屈辱に顔を真っ赤に染め、涙をボロボロとこぼしながら、必死にブラシを動かしている。
『テロップ:【速報】聖女エリス様、皆様の減税のために本日も元気に奉仕中! 彼女が靴を一回磨くたびに、皆様の来月の税金が1銅貨安くなります!』
スクリーン越しに、民衆のどよめきと、胃を抉られるような罪悪感が伝わってくる。俺の『絶望の収穫』には、街中の人間が抱く「自分たちのために聖女を犠牲にしている」という醜い自己嫌悪が、怒涛の勢いで流れ込んできた。
「ほら、見てみろよエリス。お前の磨き方が甘いせいで、今、どっかの子供のパンを騎士が取り上げてしまったぞ? もっと心を込めて磨かないとなあ」
「っ……ひぐっ……ごめんなさい……ごめんなさい……!」
聖女が泣きながら靴を舐めるように磨く姿が、ライブ配信される。今後の活用も含め、街道や限界村などにも随時設置させている。
かつて彼女を拝んでいた信者たちは、そのあまりの光景に嘔吐し、あるいは「もっと安くしろ!」と開き直った罵声をスクリーンに浴びせ始めた。
「善意」が「共犯関係」に変わり、世界がゆっくりと、しかし確実にどす黒く染まっていく。
「ああ、いい。この味だ。この味だぁ。ハハハ。




