可愛いペットのエリスちゃん
エリスの瞳から光が消え、ただ涙だけが溢れ出す。
その様子を見ていた魔族たちは、もはや恐怖を通り越して、ドン引きだ。心底から俺を。ただ「王」と認めざるを得ない表情でもと跪いていた。
「さて……次はどうしようか? ねえ?」この聖女を連れて、魔王の城までピクニックに行こうか? 例の悪に堕ちきれていなかった哀れな男が口ずさんでいたカタツムリの歌でも歌いながら。
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エリスのフェロモンを十分全身で味わった後……。
「ほら、エリス。足元に気をつけろよ。お前が転んで怪我でもしたら、街の連中の税率がまた跳ね上がっちゃうからな」
俺は、豪華な馬車に揺られながら、窓の外で泥にまみれて歩く聖女エリスに声をかけた。
彼女は今、かつての輝かしい聖衣ではなく、俺が特注した「重い鉄鎖のついた薄汚れた従者服」を纏っている。彼女が一歩歩くたびにジャラジャラと鳴る音は、俺にとって最高の環境音楽(BGM)だ。この世界だとdjミュージックを聴けないのが、ちと悔やまれるな。
「……っ……う……」
エリスは唇を噛み締め、俯いたまま歩き続ける。彼女の背後には、俺に従属を誓ったあの魔族の斥候たちが、荷物持ちとして整列して歩いていた。
かつての天敵である聖女と魔族が、一人の男のために列をなして歩く。この世の理がねじ曲がった光景に、すれ違う旅人や商人は、恐怖のあまり道端の溝に飛び込んで震えていた。
俺に最後まで抵抗して来なかったのが、こいつのつまらないところだ。
「ああ、いい天気だな。なあエリス、あそこに見える村、寄っていこうか。お前の『聖女の奇跡』で、病人を治してやるんだ」
「……え? それは……本気、ですか?」
エリスが微かに顔を上げた。絶望しきった瞳に、一瞬だけ、かつての「善意」の光が宿る。
「ああ、本気だよ。ただし、治療代は俺が『合法的に』徴収するけどな。大丈夫、安くするから」
村に入ると、エリスはボロボロになりながらも、必死に病人たちに手をかざし、聖なる魔法で彼らを癒やしていった。汚らしいな。もうあの手で俺の体を癒やしてもらうのは遠慮させてもらおう。
村人たちは涙を流して感謝した。「やはり聖女様だ!」「救世主様だ!」と。
だが、その直後。俺が笑顔で「契約書」を突きつける。
「はい、治療完了。エリスちゃんの聖なる魔力は、今や『国家指定重要資源』なんだ。それを使ったんだから、当然、対価は払ってもらうよ。この村の土地の所有権、全部俺に譲渡。あと、若い男は全員、魔王軍への『出向』という形で徴兵な。嫌なら、今治った病気をエリスに頼んで『再発』させてもらうけど、どうする?」




