前世のツケは、今世の他人が払え。
「まさか、こんな素晴らしい舞台が用意されているとはな」
召喚陣の中心で、俺はにこやかに笑っていた。
目の前には、ローブをまとったローブの男が十数人。いかにも「異世界の賢者様」といった風体のジジイどもが、目を丸くして俺を見上げている。
「お、おい! これは一体どういうことだ!? なぜ勇者様が…!」
「人選を誤ったのか!? しかし、聖なる光は確かに…!」
彼らは慌てふためいているが、俺にはどうでもいい。それよりも、彼らの顔に浮かぶ「困惑」と「焦燥」のグラデーションが、俺の細胞を活性化させていくのがわかる。ゾクゾクする。この感覚だ。ああ、愛おしい。
「ええと、失礼。勇者様、でしょうか? 私はこの国の筆頭魔術師、グランディウスと申します。ささ、まずは玉座の間へ…」
筆頭魔術師とやらが、なんとか平静を装って俺に話しかけてくる。だが、その声は微かに震えていた。見えているぞ、じいさん。お前が俺の「チート」に恐怖しているのが、手に取るようにわかる。その恐怖は、俺にとっての極上のオードブルだ。はははは。
「ああ、いいよ。玉座の間なんてどうでも。それより、お前らが俺を呼び出した理由とやらを聞かせろ」
俺はわざとらしく首を傾げ、人好きのする笑顔を浮かべた。もちろん、その笑顔の裏では、俺の「チート」が静かに起動している。
『絶望の収穫』。
この世界のあらゆる「絶望」を検知し、それをエネルギーに変換する能力。そして、その絶望の量に応じて、俺のあらゆる能力を強化する。さらに、絶望を生み出す元凶を「排除」することで、更なる快楽を得られる。
「は、はい! この世界は今、魔王の脅威に晒されており、勇者様のお力が必要なのです! どうか、我々をお救いください!」
グランディウスが頭を下げた。他の賢者たちも一斉にひざまずく。おお、美しい光景だ。しかし、この平坦な絶望では、まだまだ物足りない。もっと深い、もっと質の高い絶望が欲しい。
「ふぅん。魔王ねぇ」
俺はゆっくりと、召喚陣の縁をなぞるように歩いた。賢者たちは困惑した顔で俺を目で追う。
「で、お前らがその魔王に抵抗できないのは、結局のところ、何が足りないからなんだ?」
俺の問いに、賢者たちは顔を見合わせる。
「それは、もちろん、魔王の強大な魔力に抗しうる、勇者様のような特別な力と…」
「あと、この召喚陣も、魔王の結界に穴を開けるために、莫大な魔力を消費して…」
口々に「魔力」や「特別な力」を挙げる賢者たちに、俺は突然、満面の笑みを向けた。




