8話 メイクって難し過ぎるでしょ!
「・・・・うっ、涙が出てくる」
生まれて初めて行ったメイクは自分でもダメだと分かるほど酷いものだった。
他のメイドがしている様に編み込んでみたが、髪が絡まっただけだった。
眼鏡は外せないし。
とりあえずポニーテールで落ち着いた。
「おはようございます!」
と、誰かとすれ違う度に声を掛けるが返事は無い。
「おはようございます・・・」
はっ!として振り返ると
これまた影が薄そうな執事が一人立っていた。
「あの、え、エル様の朝食のご用意が出来ましたので、しょ、食堂にお越しください」
それだけ言うと男は走り去って行った。
「え!嘘」
今のやり取りを見ていた使用人達がリリアを見て何やら驚いている。
「いつの間にそこにいたの?!」
「ヤベぇ、全然気づかなかった!」
「影無しメイドの噂は本当だっのか?!」
口々に噂をしだす。
「お、おはようございます!」
リリアが引き攣った笑顔で挨拶をすると、蜘蛛の子散らすように去って行った。
(頑張ろう・・・)
アリエルの部屋に入りカーテンを開ける。
突然の朝日に顔を歪めるアリエル。
「さぁ、エル様朝です。起きてください」
「今日はミルクティーにしてみましたよ。さぁ起きて」
リリアはアリエルの背中に手を回して上体を起こし、ミルクティーを持たせる。
アリエルはスンスンと香りを嗅いで少し口をつける。
「今日は街を散策なさるのでしょう?早く用意しなければ人でいっぱいになってしまいますよ」
アリエルの目がカッ!と開かれる。
「街の散策行く!」
ゴクゴクとミルクティーを飲み干すと、クローゼットを開けて外着の服を選びだす。
「今日はコレを着ていく!」
白地に黒タイ、黒ズボンの水兵服だった。
「エル様はモノトーンが好きですね」
「大人の色」
「ふふっ」
着替えと食事を済ませて玄関に走るアリエル。
再びのリール "子爵"に不機嫌を隠さないユーリ。
リリアはジュナにメイクをして貰い見事リール子爵夫人となれた。
「あ、あの。お供させて頂く、し、執事のカロン・アレスと申します。よ、よ、よろしくお願い、し、します」
カロンがバッ!と頭を下げる。
「はい、今日はよろしくお願いしますね」
ユーリに手を借りて馬車に乗り込む。
カロンの運転で港まで降りると、街のいたる所で賑やかな屋台が人々を呼び込んでいた。
港街だけあって海に関する物が多い。
大イカの肉焼き、魚介を象ったガラスのアクセサリー、ここでしか咲かない珍しい花などで街を活気づかせている。
「エル、お父様から離れちゃダメですよ!迷子になってしまいます」
走り出そうとするアリエルの手を引き戻すリリア。
「大丈夫、迷子になったらユーリのせい」
「ご自分でも警戒してください!」
「エルいか焼き食べたい!」
「カロン、イカ焼きを一つお願いするわ」
「私達は、あの噴水の所にいるわね」
「か、かしこまりました奥様」
しかし、いつまで経ってもカロンが戻って来ない。
「あの野郎!いつまでかかってんだ!」
「怒鳴らないでください。旦那様。エルが怖がってしまいますよ」
「イビキをかいて寝ているが?」
待ちくたびれたアリエルはリリアの膝でイビキをかいて寝ている。
「ちょっと見てきます。エルを頼みますよ」
「私も行く。一人じゃ危険だ」
「私を攫おうなんて人はいませんよ。では行ってまいります」
「おい、待て!」
(全く、カロンはどこへ行ってしまったのかしら)
人混みをすり抜け、イカ焼きの屋台に出ようと言う時、突然後ろから伸びてきた手に香水を浴びせられたと思ったら、急に睡魔に襲われ意識を失った。
次に目を覚ました時、リリアはローブを被った顔の無い集団に囲まれていた。
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