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7話 もっとアピールしなきゃでしょ!

 ガラガラガラと城の裏門から商人の馬車がゆっくりと姿を現した。


 堀に掛かる橋を渡り、街を抜け、森にはいる。


 しばらく行くと開けた場所にでた。


 そこには馬に乗った複数の騎士達と貴族用の馬車が1台佇んでいた。


 商人の馬車から三人の親子が降りてきて、貴族用の馬車へと移り乗る。


「はぁ・・・。何事も無く乗り換えられましたね」


 紺色のドレスを着て髪を結い上げ、化粧をしたリリアとスーツを着て腕を組み、険しい顔で黙り込むユーリが向かいあって座る。


 リリアの隣では黒のカツラを被り、男の子用のスーツを着てハスキー人形を抱いているアリエルが初めての外界にはしゃいでいる。


「俺は騎士だ!結婚した覚えも子持ちになった覚えもねぇ!」


 限界が来たユーリが吠える。


「身分を隠さず王女として出る訳には行きませんよ。別邸へ着くまでですから我慢してください。旦那様」


「隠れる必要なんかねぇ!俺が全て薙ぎ払ってやる!」


「無駄な争いは時間の無駄です」


「チッ!」


「旦那、発車してよろしいですか」


 数人の騎士達も、城の者とはバレない様に雇われた冒険者を装っている。


「ああ、出せ」


「はっ!」


「笑うんじゃねぇ!」


 拳を振り上げるユーリ。


「はははははっ似合ってるぞ!リール子爵様!」


 リールは王女の身分を隠すため、子爵を装う事になった。


「クソ!」


 森を抜け、崖を越え、海辺の街で昼食を取り、丘にあるサバン公爵別邸へと着いた頃には夕刻を回っていた。


「お待ちしておりました。エル様」


「俺は騎士団に戻るぜ」


「中で着替えてからお戻りださい。誰がどこで何を見ているか分かりませんので」


 カツラを取ろうとしていたリールを家令ダン・ダーナーが制する。


 不機嫌になるリールを使用人が連れて行く。


「リリア・ガイマンさんですね」


「え?分かりますか!」


「?はい。子爵夫人に扮した方がそうだと聞いておりましたが」


 ダンが不思議そうな顔をする。


「あ、いえ。存在が薄いようでいつもは気づかれないですから驚いてしまいました」


 慌てて訂正するリリア。


 (化粧しただけで認識されるなんて、私どんだけ地味だったんだろう・・・)


「私は執事のダン・ダーナー。右はメイド長のジュナ・ダーナーです。何かありましたら私達をお頼りください」


「エル様付きのメイドをしております。リリア・ガイマンです。先程の騎士は護衛のユーリ・リールと申します。どうぞよろしくお願い致します」


 リリアはユーリの分も含むて礼をする。


「エルです。しばらくよろしくお願いします」





 マリベルの別邸がある港街、ルベリエはのどかな街だった。


 アリエルは、全くではないが刺客の数は格段に減り、一日中リリアが付いて居なくても平穏に暮らせる様になった。


 リールはその容姿と騎士としての誠実な姿にメイド達の心を奪い続けている。


 逆にリリアの評判は悪かった。 


 化粧を落とし、いつもの姿に戻った途端にあまりの影の薄さで姿を認識されなくなり、常にアリエルを一人放置しどこかに消えているメイドとして批判されている。


 そのせいで心配した使用人達の誰かが常にアリエルの側に居続けるため、アリエルは少々疲弊していた。


 (ごめんなさい!アリエル様。ちょっとつらいけど、アリエル様を守るにはこの方がいいんです)


「あのリリアって人初日に挨拶してから姿を見せないけど、どこへ行ったのかしら、まさか王女様を置いて自分だけ帰ったなんて事ないでしょうね」


「あの女、王宮でも王女様を放置して遊んでたらしいぜ。だからリール団長はあの女を無視してるんだ」


 今日も使用人達はリリアの悪口を言っている。

 中にはリリアに対して何も対策を取らないダンやジュナに不満を持つ者もいる。


 (そのうち皆、私の事なんて忘れる。私はアリエル様の影でいい・・・)


 そんな事を考えながら、二人のメイド達とアリエルが遊ぶ姿を見ていると、メイドの一人がこんな事を言い出した。


「エル様、いえ、アリエル王女様。リリアはアリエル様付きには向いていません。今すぐ解雇すべきです。」


「そうですよ!今だってアリエル様を放置してどこかで遊び呆けています。アリエル様の身が危ないと言うのに!」


 もう一人のメイドも援護する。


「リール様もそう思いますよね!」


 リリアの隣に立つユーリに問いかける。


「本気でそう思うなら今すぐこの屋敷を去るべきだ」


「俺の隣にいるこの女が目に入らないならエルの側にいる資格は無い」


「え?」


「あ!」


「気づいたか。リリアは常にエルの側にいる。エルのな!」


 ユーリの怒声にメイド達は走り去って行く。


「消えたままでいた方がエルを守れるとか思ってねぇよな」


「お前の仕事はエルを側で見ていると思わせる事だ。守るのは俺の仕事だ。勘違いするな!」


 ユーリは真っ直ぐリリアの目を見て怒る。


「・・・・はい」


 (そうだ、影の薄さを利用して見守ろうと思ってたけど、それってアリエル様を囮にしている様な物じゃない!私がここにいる!って思わせなきゃダメなんだ。もっとアピールしなきゃ!)



 影無し令嬢の卒業を決心するリリアだった。




こんにちは、ボアと申します。

もし「面白い!」と思われたら

感想などいただけると参考になりますので

嬉しいです。

よろしくお願いします。

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