21話 なりたい自分と現実の自分
春が始まった頃。
張り出された掲示板を前に喜ぶ者、泣きだす者と様々だ。
クラスはA〜Eの五クラスあり、ABが優秀、Cが平均、Dが劣、Eが死に戻りである。
この学園ではDはお笑い担当であり、Eは死人である。
「まさか俺達より下の奴がいたなんてな・・・・」
Eの看板にデカデカと名前が書かれているヨハン・サンドローズくんに対して同情を隠しきれないカイン、アリエル、ユナの三人はギリギリDクラスでなんとか生き残っている。
「この学園、どう言う基準でクラス分けしてんの?」
ゾロゾロと蠢く黒い集団を見てユナが疑問を口にする。
「ABクラス何十人いんだよって感じだよな」
「マリベルお姉様も分からないって言ってたわ」
アリエルもカインもその疑問には答えられなかった。
アリエル達とサンドローズくんは非常に困っていた。
彼等を教室へと案内する担任がいつまで経っても現れないのだ。
「もう、教室行っちまおうぜ。図があるから場所は分かるし」
カインが面倒臭そうに言う。
「そうだね。いつまでもここに居ても意味ないし」
そう言ってカインが持つ校内図を覗き込むユナ。
「教室に行っても誰もいなかったらどうするの?」
「自習でもするしかないな・・・・」
アリエルの質問にうんざりと言った顔で答えるカイン。
三人があーだこーだと話しながら教室に向かうのを一人見つめるサンドローズくんだった。
「やっぱり、誰もいないな」
カインが面倒臭そうに言う。
教室は三人掛けの机が一つと教卓だけでいっぱいになる、物置の様な部屋だった。
「ねぇ、アンタ達ってさ、なりたい自分と現実の自分の違いって分かる?」
ユナが突然切り出した。
「なりたい自分と現実の自分の違い?」
アリエルが不思議そうに聞く。
「私さぁ、ある物を守れる強い自分になりたかったのね」
「でも全然ダメでさぁ、どんなに練習しても強くなるどころかただ疲れるだけだったんだよね」
「で、ある時の後悔と言うか、失敗と言うか、思ったのね」
「あの時、私がちゃんとサポート出来ていたら事を上手く達成出来たのかなってさ」
「で、気づいた。私攻撃向きじゃないじゃん!て」
「戦闘員を助けるサポート向きの人間なんじゃないかって」
「で、強くなるとかそう言うのは一度取っ払って、とりあえずの目標として、私は誰かを助けられる人になろうと思ったの!サポートを極める!」
ユナは一気に話し終えた。
「アリエル達は?こうなりたいけど現実はこう、みたいなの無いの?」
ユナに問われたアリエルとカインは考える。
「私は、自分の身は自分で守れるようになりたい」
「でも、私は聖女だから、癒し魔法は使えても攻撃魔法は使えない」
アリエルは少し俯きながら答える。
「魔法が使えないなら剣にしろよ!」
「カッコイイぜ!ハザア!ジュサア!って」
カインが腰の木剣を抜いて何かを切る仕草をしながら興奮気味に語る。
「聖女で騎士!最強じゃん!」
ユナがアリエルの肩を叩く。
「聖女で騎士・・・・」
アリエルは騎士となった自分を想像してみるが、イメージが出来なかった。
「俺はカッコイイ騎士になりたい!俺の家、代々騎士の家系なんだよ」
「でも、去年の剣術大会で最下位・・・・」
「途中でつい、魔法使っちゃって失格」
「騎士科は魔法を使えない奴が入る科だし」
木剣を眺めながら意気消沈するカイン。
「え、でもリールさんて騎士は剣に炎を纏わせて斬撃みたいなの放ってたよ?」
「こんな大きな火炎球まで出してさ」
ユナが両手を広げてユーリの真似をしてみせる。
「ユーリは魔法も剣も両方使うよ。魔導騎士って言うの」
アリエルが思い出したように言う。
「良いじゃんそれ、魔導騎士!」
ユナがパン!と手を叩く。
「魔導騎士・・・・!」
魔導騎士となった自分を想像してニヤけるカイン。
「俺、魔導騎士になる!」
カインが木剣を掲げる。
「みんな目標決まったね」
「私は魔法使い!」
「アリエルは聖女騎士!」
「カイン?くんは魔導騎士!」
ユナがパン!と手を叩いて話を締める。
「じゃあ、今日は各自で勉強と言う事で、解散!」
「まだ授業時間内です〜・・・・」
「「「?!」」」
何か聞こえた気がする三人だった。
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