15話 血は争えませんね
「申し訳ございません。私ではアリエル王女を救う事は出来ません」
教会の神官、有名な魔術師、隣国の魔術学園の学長まで頼ったがアリエルを救う手立ては見つからなかった。
しかし、皆口をそろえて同じ事を言った。
「シュナの魔女なら・・・・」
シュナの魔女。
中立森林地帯シュナの中心にある湖に居を構える魔女の事だ。
六十年程前に王妃暗殺未遂の罪で追放され、シュナの湖に住み着いたのだ。
「シュナの魔女。六十年前にダイアナ王妃を暗殺しようとして追放された女ね」
執務室のテーブルにマリベルとリリアは向かい合って座っていた。
マリベルは本の中のアリエルを眺めながら呟いた。
「はい。シュナの森に行かせてください。直接シュナの魔女に会い、封印を解く方法を聞いてきます」
リリアが身を乗り出して尋ねる。
「それしか無い様ですね。本当は私が行きたい所ですが、城を開ける訳にはいきません」
「ご心配ありません。俺が付いてますから、必ず魔女から王女を救う方法を聞き出してきます」
リリアの後ろに立つユーリが力強く宣言する。
「あまり手荒な真似はしない様に」
マリベルがフッと笑う。
中心森林地帯は北にあり、一年のほとんどを雪に閉ざされた森だ。
湖は凍り、辺り一面真っ白な世界でポツンと赤い屋根だけが目立つ。
リリアは夕ご飯のシチューの香りに腹を鳴らしながら家のドアをノックした。
「はぁい!」
バタバタと走り寄る音がした後にドアが開きアリエルと同じ歳くらいの青に近い黒髪の女の子が顔を覗かせた。
「はい。どちら様でしょう?」
「あの、シュナの魔女様にお話があって参りました。グランベール王国、アリエル王女様付きのメイドをしております。リリア・ガイマンと申します。お会い出来ますでしょうか!」
リリアが本を胸に抱き必死に名乗った途端、女の子の顔が険しくなった。
「すみませんが帰ってください。祖母は居りません!」
「ではお戻りまで待たせて頂きます!もうお祖母様しか頼れる方がいないのです!」
「祖母は死にました!」
「勝手に殺すんじゃないよユナ」
赤い髪に赤いワンピース、白の毛皮のベストを身に着けた老婆が杖を付いてこちらへゆっくりと歩いて来た。
「だって無実のお祖母ちゃんを追放した国の人なんて碌なもんじゃないでしょ!」
「無実?当時の王妃を暗殺しようとしたのだろ?」
ユーリが尋ねる。
「してない!元々王様の婚約者はお祖母ちゃんだったの!それを浮気相手を暗殺しようとしたなんて言いがかり付けて追放されたの!お祖母ちゃんは何も悪い事なんてしてない!」
ユナは目に涙をためて訴える。
「祖父がした事と同じ事を孫がしようとして失敗したのか。血は争えないな」
ユーリが苦笑する。
「昔の事さ。この人生に悔いはないよ」
魔女シュナはしっしっと肩を揺らして笑う。
「で、何の用だい?」
リリアが抱く青革の本を見て顔が険しくなる。
「その青革の本、どこで手に入れたんだい?」
「あっ!そう言えばその本、うちの本じゃない!いつ盗んだの?!」
「返して!」
本を守るようにしゃがみこむリリアの前に立つユーリに阻まれ、ユナは一瞬怯んだ。
「止めないかユナ!」
シュナが嗜める。
「これは気づいたら王女の学園鞄の中にありました。ページを開くとアリエル王女が吸い込まれ、封印されてしまったのです!どうか王女をお救いください!」
「え?!じゃあリズレッドの封印も解いちゃったって事?!」
「あっ・・・・」
少し気まずくなるリリアだった。
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