14話 成績は下の下
七年後、アリエルは十二歳になった。
現在は王立学園の初等部に通っている。
紺のブレザーに赤のリボンがよく映えている。
少し俯いた横顔になびく銀髪が、すれ違う他生徒を振り向かせる。
リリアは美しく成長したアリエルを誇らしく見ていた。
「はぁ、勉強とか面倒臭い!」
アリエルはリリアに急かされ渋々ノートを開く。
「何を仰るのですか、また宿題を忘れて居残りでやらされても知りませんよ!」
「分かったよぉ」
鞄から教科書を取り出そうとした時、青い革表紙の覚えのない本があるのを見つけた。
「何これ?私のじゃない」
「どなたかが間違えて入れてしまったのでしょうか?」
本は見知らぬ言語で書かれている。
アリエルは適当にページを開いて見た。
細長い箒に横座りした青いマーメイドドレスの女性が描かれている。
その女性がフッと笑った気がした。
「え?」
気づくとアリエルは本の中で巨大な自分と目を合わせていた。
「アリエル様、どうかしましたか?」
「何でもないわ」
本の向こうのアリエルはそう答えると本をバタンッと閉じて脇に置いた。
「さぁ早く勉強終わらせちゃいましょう」
「え?ええ。そうですね」
リリアはアリエルの意外な言葉に少し戸惑った。
「ここは何なの?」
アリエルは何もない真っ白な空間で一人呟いた。
(女神フレア様、私はこれからどうしたら良いのでしょう?この本は何なのですか?どうしたら本から出られますか?)
『全く、不用心にも程があります。数は減ったとは言え、貴方は命を狙われているのですよ』
アリエルがそおっと目を開けると、褐色肌の美しい女性が腕を組んで立っていた。
「申し訳ございません。私の不注意でした。反省します」
『はぁ、青の読み手を尋ねなさい。青の読み手なら貴方を解放できるでしょう』
「その人はどこにいますか?」
アリエルは上目遣いで恐る恐る尋ねる。
『中立地帯の森にいます。後は自分でお探しなさい!』
それだけ言うと女神フレアは消えてしまった。
「探せって本の中でどうやって探せば・・・・」
我儘一つ言わずに、しかも間違える事無く難なく問題を解いて行くアリエルに違和感を持ちながらも早々に宿題を終える事が出来たリリア。
一つ試して見る事にした。
「今日もよく頑張りましたね、アリエル様。いつもの様にチョコレートを一つだけ、食べて良いですよ」
リリアはエプロンのポケットから小さなチョコレート缶を取り出して、蓋を開けて差し出した。
「今日は良いわ。もう寝るから貴方も戻って良いわよ」
アリエルが手をヒラヒラさせて青革の本に手を伸ばす。
それをリリアが奪い取る。
「やっぱり!」
先程のページにアリエルに似た少女の絵が描かれているのを見つけて入れ替わりを確信する。
「あんた!アリエル様を解放しなさい!」
「無理〜」
魔女は変身を解いて姿を現し深呼吸をする。
「私は本に封印されてただぁけ。私じゃどうにもできないわ」
「ご愁傷様、さぁ本を渡しなさいよ!」
魔女はパキパキと氷の球を作る。
「わ、渡すわけないでしょ!」
本を胸にギュッと抱えるリリア。
「なら氷漬けにしてあげる!」
氷の球を振りかぶる魔女に対して、リリアは体を縮こまらせる事しかできない。
瞬間、魔女の右手をナイフが弾いた。
「痛っ!」
左手で右手を支えながらナイフが飛んできた先を睨む。
「大丈夫かリリア!」
ユーリがリリアの名前を叫びながら部屋の中に飛び込む。
「ちぃっ!」
魔女は悔しそうな顔をして消えた。
「リールさん。アリエル様が!」
本の中のアリエルは何かを叫んでいた。
セリフが書かれていたがリリアには読めなかった。
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