13話 絶対守って見せる!
それからはすぐだった。
魔族によって五つのクリスタルは破壊され、瘴気が浄化される事なく溢れ出して世界を覆った。
木々は枯れ、人々は病気に侵され、魔物達が押し寄せ蹂躙していく。
世界は魔王に支配されたのだ。
ハッと気づくとリリアはキースからのプレゼントを持って立っていた。
「リリア、早くお兄様からのプレゼント頂戴!」
両手を差し出し早く早くとせがむアリエル。
「は、はい!」
「あっ!」
バキッ!
リリアは意を決すると、わざと転んでプレゼントを踏み壊した。
「ああっ!」
「お兄様の、プレゼント・・・・」
アリエルは涙目になってハスキー人形を抱きしめる。
「も、申し訳ありません!!」
必死に頭を下げるリリア。
「ちょっと何やってんのよアンタ!」
「エル様のお兄様からのプレゼントを壊すなんて何考えてんのよ!」
「そうよ!」
「追放されたと言ってもエル様のお兄様なのよ!」
「申し訳ございません!」
壊れたプレゼントを抱え何度も頭を下げるリリア。
パンパンパンとジュナが手を叩いて場をおさめる
「リリアは下がりなさい。皆、せっかくのお誕生日会です。元気に行きましょう!」
「さぁエル様、マリベル様からプレゼントとお手紙が届いてますよ!」
そう言ってマリベルからの大きなプレゼントを差し出す。
「マリベルお姉様から!?頂戴!頂戴!」
パアッ!と表情が明るくなるアリエル。
リリアはそれを見守りそっと場を後にする。
(どう言う事!?私達、一度魔族に滅ぼされたはずなのに!なんでこの日に戻ッてるの?!)
リリアは自分の部屋に駆け込み、ベッドに座り込む。
崩れたプレゼントの紐を解き、割れた鏡を取り出す。
なんの変哲もない銀細工が細やかな手鏡だ。
「な、なんで壊すの。い、い、今までそんなミ、ミスし、さなかったよね」
背後から聞き慣れた喋り方の声が聞こえる。
バッ!と振り向くが誰もいない。
「気のせい?」
辺りを見回すが気配も無い。
はぁ・・・・。と溜息をつき割れた鏡を接着剤で修復した。
下手くそな出来上がりに苦笑いしていると、突然鏡が眩しく光だしあっという間に完全に元通りになってしまった。
「え、な、なに?」
「いやあああ!!」
戸惑っていると庭からアリエルの悲鳴が聞こえた。
「アリエル様!?」
急いで庭に駆け出るリリア。
そこにはカロンがアリエルの体を持ち上げ、首を締めている姿があった。
「り、リリ、ア。たす、け、て」
アリエルがか細く助けを求める。
ユーリ他、騎士達はカロンからアリエルを救出しようと奮闘しているが、実態が無いのか剣がすり抜けてしまう。
『鏡を使いなさい』
聞き覚えの無い女性の声が頭に響く。
「カロン!」
リリアはカロンの目の前まで走り、手鏡を眼前に掲げた。
「それは!?」
カロンの体から黒い瘴気が溢れ出し、鏡に吸い込まれて行く。
「ヴァアアアッ!!」
ドサッ!
カロンがアリエルの首を手放しアリエルが地面に打ち付けられる。
「うっ、えほっ!」
喉に手を当てえづくアリエル。
バシイィ!
ユーリがカロンの右肩から左脇腹にかけて切りつける。
「えい!」
リリアがバリィン!と鏡を踏みつけて割る。
「イィッ!あがっ!」
カロンは倒れ込み、泡となって消えていった。
「アリエル様!しっかり!」
リリアがアリエルに駆け寄り背中を擦る。
「リリア!イキナリ黒い腕が伸びてきて、私の首を絞めたの!」
「凄く苦しくて、怖かった!」
わああっ!とリリアの首に抱きつき安心した様に泣くアリエル。
「大丈夫です!もう大丈夫です!」
アリエルを抱きしめ涙を流すリリア。
「誕生日会は中止です!怪我人の手当てを!リリアはアリエル様をお部屋へ!」
家政婦長のジュナが指示を出す。
良く見るとほとんどの使用人達が床に倒れている。
ユーリも満身創痍といった感じで膝まづいている。
(未来が変わった?!あの声は何だったの?カロンはどうなったの?)
幾つもの疑問を感じながらアリエルを部屋へと連れて行くリリアだった。
リリアは夢を見た。
色とりどりの花が咲く草原に白いドレスを着て、日傘を差す女性が一人立っている。
側には揺りかごで赤ん坊が手を空に泳がせている。
「リリア、あなたは生きたい?それとも死にたい?」
リリアはよく分からないと言う風に頭を傾ける。
「リリア、十三年後に生まれる聖女を守りなさい。世界を救うのです」
そう言うと、女性はリリアの頭を撫でた。
「あなたにちょっとした能力を授けました。この能力を使い聖女を守りなさい」
女性は顔を上げ、覗いているリリアの目を真っ直ぐ見据えた。
ハッと目が覚めた時にはすでに深夜を回っていた。
リリアは涙の跡を残してグッスリ眠るアリエルの寝顔を見て、この出会いは運命だったのだと悟った。
(なんとしてでもアリエル様を守って見せる!)
そう決意するリリアだった。
一部 完
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