12話 聖女の力が無くなった!
「アヤカは数カ月前にうちの村に来た女だよ。村の端にあるボロ屋に数人の男達を連れてたね」
「まぁ、男達は次の日には居なくなってたけどね」
「私達は変なのが来たって遠巻きにしてたけど、話してみればいい子でね。父親がヤバい金に手を出して、あの男達に売られたって言うんだ」
「アヤカには父親違いの妹がいてね、男の子として金持ちに売られて離れ離れになっちまったんだと」
「一目で良いから会いたい。連れて来てくれないかって泣くから、子どもはあるべき所に居るべきだと思ったんだよ!」
屋敷の地下にある取り調べ室にてメイド、サブリナの聴取が行われ、数日後、サブリナは憲兵に引き渡された。
リリアはマリベルに報告の手紙を書き、二日後に返事が届いた。
『アヤカ・イササカは王子の浮気相手の平民の女性です。イササカ嬢がなぜアリエル様を狙ったかは分かりませんが、引き続き警戒をお願いします。 マリベル・グランベル』
(何が起こってるの?王家への復帰を目論んでるとか?でも王子は次の日に消えたらしいし・・・・)
意図が分からず頭を抱えるリリアだった。
数週間後、この日は王女アリエルの六歳の誕生日。
夏真っ盛りの雲一つない日の事だった。
屋敷中の使用人が庭に集まり、アリエルの誕生日を祝う。
勿論警戒は怠らなかったが、プレゼントの中に一つ、キース王子からの物があった。
少し迷ったが、たった一人の兄妹からのプレゼントをないがしろにはできないと、渡すことにした。
「エル様、お兄様からのプレゼントが届いていますよ」
リリアはプレゼントを開けてはしゃいでいるアリエルに声を掛ける。
「お兄様から!?頂戴!リリア頂戴!」
アリエルはリリアから受け取ったキースからのプレゼントを懐かしそうに大事に開ける。
中にあったのは子鹿を象った飾りが付いた、シンプルな小さな手鏡だった。
「お兄様が選んだにしてはセンスのある手鏡だわ?」
アリエルが手に取り鏡を覗き込むと、体から光の玉が飛び出し鏡に吸い込まれてしまった。
「エル様!」
「エル、大丈夫か!」
後ろに控えていたユーリが倒れそうなアリエルを支える。
「エル様、大丈夫ですか?!何処か具合が悪い所などありませんか?!」
リリアがアリエルに駆け寄る
「だ、大丈夫よ。どこもなんとも・・・・」
「あ、あ、声が、声が聞こえない!」
どうしよう!と慌てるアリエルを落ち着かせるリリア。
バリィィッ!
その時、黒い腕がテーブルから生えたと思ったら手鏡を掴んで握り潰してしまった。
「はははははっ!」
(この声、カロン?!)
「あっはっはは、コレでせ、聖女はちち力をうしなった!ここ、この世界は魔王様のも、ものだ!」
どこからか甲高い笑い声が聞こえ、空に消えた。
聖女の力を失った王女の噂は世界中を駆け巡り、我が子こそが次の聖女だ!と触れ回る輩が多発した。
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