冷遇された少女は幸せを知る
「君のお母様の名前は、セシル。水龍だ。」
「水龍?まさかお母様も龍神なのですか?」
「そうだ。君の傷が癒えているとき、水龍セシルの魔力を感じた。だから、君を癒したのは、水龍セシルだ。」
「なぜ、それが母だと?」
「十五年前、水龍セシルの存在は消滅した。龍神族は人間と子を作ってはいけないという掟がある。それを破った場合のみ、龍神族は消滅するんだ。だから、セシルが消えたとき私たちは焦ったよ。行方が分からなかったセシルが掟を破り、消滅したと。セシルはね、その時、身ごもっていたんだよ。緑龍マナトの子を、それが君だろう。」
「え?でもお母様は私を生んでから死んだと...」
「それは嘘だろう。君の封印が解けた今、ようやくわかった。君はセシルとマナトの子だ。霊力と顔つきが二人によく似ている。」
そんな、じゃあ私、旦那様いえ、華純徹の子ではなかったの?
「そんな、ではなぜお母様は華純徹と?愛する方がいらっしゃたのですよね?」
「それはこいつに聞けばわかるさ。なぁ?華純徹、なぜおまえとセシルの子が生まれることになったのだ?」
そう尋ねながら、ゼロ様は白い光の玉を華純徹のほうへ向けた。
「ひぃぃー、そ、それは今から二十年前のことになります。」
二十年前
「当主となったのはよいものの、誰をめとればよいのだろうか?女はみな、力が弱い者しか残っておらん」
当時は当主を決める戦いで、霊力が強い女性をめとり、我こそは当主になろうというものが多かった。だが、結局は霊力が一番強いものが当主となった。それが徹だ。
徹が当主になったのはよいものの、霊力が強い女性はもう残っていなかったのだ。
「どうしたものか。子の霊力が弱ければ、私は笑われてしまう。」
そう考えながら、徹は魔を祓っていた。すると、目の前に一体の龍が現れた。
「ここら辺の魔を祓ってくれたのですか、感謝します。私は今身ごもっておりますので、力が出ないのです。夫が来るまでの間、助けてはくれませんか?」
龍神族は身ごもると、その力は身ごもっている2年間は一切使えないのだ。だから、徹たちに頼んだ。
それが間違えだった。
―龍神族に身ごもってもらえばものすごい霊力を持った子が生まれるだろう。―
そう考えた徹はある計画を思いついた。
「いいでしょう。ですがここは危険なので安全な私の家へとお連れいたしましょう。」
「感謝します。」
そして、セシルは華純家へ入ってしまった。
「徹殿、夫とはまだ連絡が取れないのですか?」
「はい。まだ、それらしき人物は目にしておりません。もうすぐ子も生まれるでしょう。こちらで安全に生んではいかがです?」
「そうですね。そうさせてもらいましょう。」
そして、まひるを出産した。
そこで、徹は本性を現した。
「悪いがその子は、預からせてもらおう。お前には私の子を産んでもらわないと困るからな。」
「何を言って! きゃあ!」
「こいつの命が惜しくないのか?」
「くっ!わかりました。せめて最後に、この子と二人にしてください。」
「よかろうだが、お前らが逃げないよう見張らせてもうぞ。」
「えぇ、わかっているわ。ごめんなさいね、まひるこんなバカな母親で。どうか幸せになってね。」
「これがあの日の真実だ。」
「そんな。なんてことを...」
「華純徹。お前は大きな罪を犯した。龍神族に無理やり子を産ませたのだ。その罪はつぐなってもらうぞ。」
「罪だと?いったい何様のつもりだ⁉なんなんだおまえは!」
「俺か?俺は龍神族の長、白龍ゼロリアス。」
「は、白竜だと‼あの、冷酷無慈悲な白竜だというのか⁉」
「そういっているだろう。」
嘘っ。ゼロ様があの龍神族をまとめ、人間に襲い掛かる魔のものを祓っている白竜様なの?ずっと何龍様か気になっていたけど、そんなすごいお方だったなんて...
「やっぱり驚いたか?まひる。俺は霊力を奪い、自分の力にしているからな...」
そう、白龍ゼロリアス様は、他者の霊力を奪い自分の力にする冷酷無慈悲な奴。といううわさもある。だけど、
「確かに驚きましたけど、霊力を奪うのは罪を犯した者だけですよね?冷酷でも無慈悲でも何でもないじゃないですか!」
「そうか、まひるはわかってくれているんだな。そんな存在初めてだ。」
「もう十分でしょう!私はこんな怖い目にあったのだ!罪は償っただろう!」
「は?何をふざけたことを言っている。おまえはセシルに無理やり子を産ませ、死なせたんだ。その罪はしっかりと償ってもらう。もちろんお前もだ華純花。お前は、たとえセシルの子だとしても、人を傷つけ殺そうとした。その罪は償ってもらうぞ!」
「いやぁぁーーー!」
このあと、二人と華純家はその罪の重さから全員霊力を取られ、永遠に日の下を歩けなくなった。そして私たちはというと...
「なあ、まひるあのときのことなんだが...」
「さ、さぁ、家に帰りましょう。もう遅いですから。」
うまくごまかそうとしたが、
「まひる。俺はお前が好きだ。お前と過ごしているうちに、少しづつ好意を持って行ったが、お前は人間だと思っていた。だから、言い出せなかったが、今は違うお前を失いそうになって分かった。俺はお前が人間でも、龍神でも構わない。お前とずっと一緒にいたいんだ。まひる、お前はどう思ってるんだ。」
「・・・私はずっとなにも持っていないと思ってました。友人も家族も感情さえも。でも、ゼロ様に出会いいろいろなことを知りました。うれしいも、楽しいも。そして大好きも。だから、こんな私でよければどうかこれからも、よろしくお願いします。」
「っ!本当か⁉よかった。断られたらどうしようかと思った。これからもよろしくな、まひる。」
「はい‼ゼロ様。いいえ、ゼロ。」




