優しい龍神様
「まさかそんな奴らが五大陰陽師家に存在していたとは…」
「他の家ではないのですか?」
「あぁ、たとえ霊力がなくとも召使いなどにはされず、しっかりその家の子として育っているぞ。自分の子だからな、それはそれは大切に育てているさ。」
「…そう、ですか。華純家がおかしかっただけなのですね。華純家に生まれてしまったから、私は...」
それから私は子供のように泣いてしまった。華純家に生まれさえしなければ、私は愛してもらえていたのに、華純家にうまれてしまったばかりに...
そう考えるとどうしようもなく涙があふれてきた。
「つらいだろう、泣きたいだけ泣け。」
龍神様はそういうと、とても優しい顔で笑った。
「すみ、ません。おち、つきました。」
「いい泣きっぷりだったな。今までよく頑張ったな。これからはここにいるといい。ここには、霊力がない奴だってたくさんいるからな。お前のことを悪く言うやつはいないさ。」
「よいのですか?」
「あぁ。働いたりもしなくていいぞ。今まで十分頑張ってきたのだ、今は休んでこれからどうするのか考えたらいい。だが、死ぬのはなしだぞ?」
「はい、わかっております。今死んでしまったら、あの者たちの思うつぼですから。これからよろしくお願いします。」
そういって頭を下げた。
「あぁ。よろしくな。」
それから数日、本当に私はなにもせず、悪口を言われたりもなく、平和に暮らしていた。
-あぁ、生きるというのは、こんなにも穏やかなものなのね。ゼロ様には感謝しないと。-
コンコンッ
「どうぞ。」
ガチャッ
「失礼するぞ。調子はどうだ?」
「ゼロ様!はい、おかげさまですっかり良くなりました。私あんなに豪華なご飯初めて食べました。」
「豪華って、あれはただのおかゆとみそ汁だぞ?」
「どちらも暖かいではないですか⁉私いつもカピカピのごはんと冷めた具なしのみそ汁でしたから...」
「そうか、飯もほとんど食べれていなかったのだな。調子が良くなったら、おいしいものをださせよう。」
「本当ですか⁉楽しみです。ですが、ゼロ様はなぜこんなにも私に良くしてくださるのですか?」
ゼロ様は考えるように手に顎をのせました。
「そうだな、俺が龍神だと知っても、力を貸すように言ってこなかったから、かな。俺が竜神だと知ると、人間はいつも俺に力を貸せと言ってくる。だがお前は、興味なさそうに俺から離れようとした。それが少しうれしくてな、お前なら俺自身を見てくれる気がして、死なせたくないと思ったんだ。」
ゼロ様は少し悲しそうな眼をした。
「そうなのですか、竜神というのも大変なのですね。ゼロ様はこんなにも優しい方なのに、なぜ中身を見ようとせず、力を求めるのか...」
「優しくなどないさ、助けを求めてきたやつを無視しているのだからな。」
「優しいですよ。私はその優しさのおかげで生きているのですから。」
「ありがとう、まひる。」




