冷遇された少女
私は華純まひる、17歳だ。華純家は代々魔を祓う名門陰陽師の家だ。私はそんなすごい家に生まれた。魔を祓う力は18歳になると、その身に宿るとされている。そして力の大きさは、生まれた時から持つ霊力の値に比例する。私には霊力は一切なかった。だから、家からは一切の期待をされず、一縷の望みで生かせれているだけだった。だが、それも明日で終わりだ。明日は私の誕生日。18歳になった瞬間、この身に霊力が宿らなければ私は良くても身一つで家を追い出される。悪ければ殺されるだろう。でも、それもいいかと思う。むしろ、唯一の救いだ。だって、生まれてからずっと奴隷のように働かされ、食べるものもほとんど貰っておらず、暴力だって受けているのだ。身も心もボロボロだ。ようやく...ようやく明日楽になれるのだ。
ガコンッ バシャッ
「あら?ごめんなさいねぇ。間違えて蹴ってしまったわ。でも、お似合よー。アッハハハ」
この人は華純花。私の3つ下の妹だ。
...もうこんな扱いも慣れた。これでもいつもよりマシなのだ。いつもなら髪を抜かれたり、蹴られたりしている。でも、今日は機嫌がいいみたいだ。明日で私が消えるからだろう。
「片付けないと。」
これも今日で終わりにできる。やっとお母様のもとへ行ける。母は私を生んですぐに亡くなった。見たことはないけど、とても優しい人だったんだった。そんな気がする。
「あとは、玄関前の落ち葉を掃けば終わりか。」
誰の目にもつかないように、いつも誰もいない道から玄関へ向かい、掃き掃除を行った。すると...
「旦那様がお呼びです。その汚らしい格好をどうにかしてから向かってください。」
「わかりました。」
私が返事すると、すぐに行ってしまった。
「急がないと。」
「まひるです。まいりました、旦那様。」
私は花と違いお父様と呼ぶのを許されていない。
「遅いぞ!呼ばれたらとっとと来ないか!」
「お父様、私がさっき掃除用の水をかけてしまったのですよ。そんな恰好で来られたら迷惑ですわ。まぁ、いつでも臭いのですけどね。アハハハハハハ」
「確かにそうだな。ハハハハハ」
「・・・」
「何の話か分かっているな?明日のお前が生まれた時間に力が宿らなければ、お前には死んでもらう。役立たずが家にいるなんて、ほかの家に知られたくないからな。」
そうか、やっぱり死ぬのね。あぁ、明日が待ち遠しい。
「とは言ってもだ。手にかければ、龍神様の罰が当たる。そこで、お前を魔が住まう森に開放してやろう。運が良ければ生きていられるかもな。」
魔の森か、生きれる可能性はないな。生かす気はないだろうけど。
「かしこまりました。」
「話は終わりだ。とっとと出ていけ。」
深く礼をしてその場から離れる。私の顔はほんの少しだけ、微笑んでいた。




