第8話 森の知恵袋と伝承の夜
前回のあらすじ
巨大魔獣が村に乱入!春樹は即席の弓で大奮闘、リディアの魔法と親飛竜の援護で大混戦を切り抜ける。戦い後、子飛竜が春樹のそばに残り、新たな冒険の仲間に――
村人たちは食料や酒を持ち寄り、夜通しの宴会が始まった。
春樹は最初こそ控えめに参加していたが、気付けば若者や子どもたちに囲まれ、ダンスに引っ張り出され、謎のゲームに挑戦させられ、さらに元気すぎる老婆の勧める強い酒を飲む羽目になった。
「おーい、はるき! こっちの輪に入れ!」
「いや、待って……酔っ払ってるんだって!」
「大丈夫、手をつかめば支えてやる!」
春樹は笑いながらも、子どもたちの手に引かれ、輪の中でぎこちなくステップを踏む。
「よし、次は謎のゲームだ!」
「なんだそれ……?」
「説明しろー!」
と、声が飛び交う中、長老が顔をほころばせながら立ち上がった。
「皆、落ち着け……今日は、昔から伝わる村の伝承について少し話してやろう」
春樹は半分酔った頭で耳を傾ける。長老はゆっくりと語り始めた。
「この森の奥には、かつて“風を司る精霊”が棲んでおったとされる。その力は森を守り、人々の道しるべにもなったという……あれ、なんじゃったかのう……」
村人の一人が小声で突っ込む。
「また始まった、長老の物忘れタイム!」
「ほれほれ、落ち着きんさい、セリじい!」
「もう、またかよー!」
長老は苦笑しながら肩をすくめた。
「そういえば……自己紹介がまだじゃったな……うっかりしとったわい……はっはっは!」
村人たちは笑いながら拍手し、親しみを込めてからかう。
「おーい、自己紹介早うせい!」
「セリじい、やっと本題かのう」
「森の知恵袋様、やっと名乗ったか!」
「ほんまに忘れっぽいのう、セリじい!」
子どもたちもせがむ。
「セリじい、もっと話して!」
「ねえ、竜のことも教えて!」
「そうじゃ、飛竜の話も頼むぞ!」
長老はゆっくりと胸を張り、誇らしげに答える。
「ワシはこの村の長老、セリオスじゃ。村人には『森の知恵袋』や『竜の友』と呼ばれておる。森のこと、飛竜のことには少々詳しいつもりじゃ」
村人たちが声を揃えてからかう。
「おーい、知恵袋様、忘れ物多すぎ!」
「竜の友なのに、忘れるんかい!」
「またその話かー!」
「セリじい、次はどんな伝承じゃ?」
春樹も半ば酔った頭を振りながら、声をかけた。
「セリオス長老、もっとこの伝承の話を詳しく聞きたいです。森や精霊のこと、もっと知りたいんです」
長老は目を細め、ゆっくり頷く。
「そうか、詳しい話じゃな……ならば、街に行けば、この話にもっと詳しい者もおる。明日の朝までには紹介状を書いておくから、君たちの旅の助けになるじゃろう」
村人の一人がにやりと笑った。
「おお、それならはるき、明日は街まで行くんじゃのう!」
「ええっ、旅に出るって言うなー!」
「でも楽しみじゃな、はるき、精霊の話、ちゃんと聞いてこいよ」
「森の知恵袋様の言うことは間違いないからな、頼むぞ!」
「セリじい、また忘れ物したら許さんぞ!」
「はっはっは、心配せんでもええ、わしはしっかり書くつもりじゃ!」
子どもたちが輪になってはしゃぐ中、春樹は苦笑しながらうなずいた。
その後、春樹は記憶が途切れるほど酔わされ、気が付けば――記憶がぷつりと途切れていた。
読んでくださりありがとうございます!春樹は村の宴会で踊らされ、ゲームや強い酒に振り回されつつも、長老の伝承に耳を傾け、翌日の街への旅に胸を躍らせます。




