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あぜ道から始まる異世界冒険譚(あぜ譚)  作者: 蒼い向日葵


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第5話 飛竜の親子、森の奥での再会

前回のあらすじ

春樹とリディアは子飛竜を親のもとへ無事に戻し、迫る危険を収める。リディアは魔法で親飛竜の傷も癒し、親子は再び森へ飛び立つ。別れを惜しむ子飛竜の姿に、春樹は胸の奥に温かな余韻を残す。

森の奥に、低く震えるような咆哮が響く。


春樹とリディアの前に姿を現したのは、傷を負った巨大な親飛竜だった。

その鋭い眼が、春樹の腕に抱かれた子飛竜を捉えた瞬間、空気が緊張で張りつめる。


子飛竜が「キュウッ!」と鳴き、親飛竜に向かって身を乗り出す。


春樹がそっと地面に下ろすと、小さな体はふらつきながらも、一生懸命に親へ駆け寄った。


親飛竜は子飛竜の体を大きな翼で包み込むように寄り添い、しばらく動かず子の無事を確かめる。


荒かった呼吸が、次第に落ち着いていくのがわかった。


春樹は胸を撫でおろす。

その瞬間、親飛竜の視線が再び春樹たちへ向けられた。


警戒は残るものの、先ほどまでの怒気は消えている。


リディアが一歩進み出る。


「大丈夫よ。あなたの子は、ちゃんと守ったから」


そう言って両手をゆっくり掲げると、柔らかな光が指先から広がった。


親飛竜は訝しげな仕草を見せ、最初はわずかに身を固くする。


だが、子飛竜が小さく鳴き、リディアに寄り添うように視線を送ると、親は抵抗を解き、静かに翼を下ろした。


「痛かったでしょう? 少しだけ我慢してね」


リディアの魔法の光が、親飛竜の裂けた鱗や傷ついた肩をゆっくりと包み込み、温かい波紋が広がっていく。


巨大な体が息を吐き、緊張を溶かすように地面を踏みしめた。


春樹は、そんなリディアの横顔を見つめ、思わずつぶやく。


「リディアって……本当にすごいな」

「ふふん、任せといて」


彼女は得意げに胸を張りつつも、子飛竜の頭を優しく撫でた。


やがて癒しの光が収まると、親飛竜はリディアの前で重々しく頭を下げた。

春樹にも視線を向け、まるで礼を言うように深く鳴く。


その後暫くの間、飛竜の親子は無事を確かめ合うかのように身をこすり合わせていた。


春樹とリディアから離れるように歩み始める親子…

子飛竜は、親の翼に寄り添いながらも、何度も春樹へ振り返る。

小さな瞳が名残惜しそうに揺れている。

春樹も、そっと手を振った。


「また……会えるといいな」

リディアが微笑む。


「きっと会えるわ。あの子、あなたが大好きみたいだもの」


親飛竜は大きく翼を広げ、風を巻き起こして空へ舞い上がる。

子飛竜は最後の最後まで春樹を見つめ続けた。


森の上空へ消える影を見送りながら、春樹は胸の奥に温かな痛みのような感覚を覚える。



親子は去った。しかし、これは終わりではない。


――やがて、再びあの小さな翼が春樹の元へ帰ってくることを、彼はまだ知らない。

読んでいただき感謝です!

ここらまで毎日少しずつ投稿していましたが、内容も少し練り込みたいと思い始めました…

何度も読み返してみると、割と穴だらけのような気がしています。当初の予定通り、週に2〜3話を目指します。

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