第3話 森で出会った飛竜の親子
前回のあらすじ
異世界の森で迷う春樹、謎の少女と出会い、冒険の第一歩を踏み出す
簡単な自己紹介を済ませた後、出会ったばかりの少女…リディアの後を追いながら、春樹は背の高い草をかき分け、森の奥へと進む。
足元の土は柔らかく、湿った匂いが鼻をくすぐる。
枝や葉が光を遮り、木漏れ日が地面に斑模様を作っている。
「……落ち着け、まずは状況確認だ」
春樹は小さくつぶやき、息を整える。
弓道で鍛えた冷静さが、かろうじて心の揺れを抑えてくれる。
しばらく歩くと、背の高い草の奥で小さな動きが見えた。
(何かな…?)
危機感も何も感じず、春樹は草むらに向かって歩き出す。草をかき分けてみると、そこには体長は1メートルにも満たない、生まれたばかりの子どもくらいの大きさの何か…。
更に近づくと、淡い青色の鱗に覆われた小さな翼が折れ曲がり、血が滲んでいる。
「……飛竜……?」
春樹は息をのむ。ゲームの中のモンスターのようだが、確かに生きている。
小さく震え、痛みに耐えている姿は、無力でか弱い子どものようだった。
「大丈夫、大丈夫……俺は何もしない」
そっと手を伸ばすが、飛竜の子は恐怖で後ずさる。
「――触らないで!」
リディアの声が森に響き、春樹の前に立ちはだかる。
小さな弓を握り、鋭い目で春樹をにらむ。
「どうしてこの子に近づこうとするの!? 危ないでしょ!」
「いや、その……助けようと……」
「助ける? 本気で言ってるの?」
ため息をつきつつも、リディアは飛竜の子にそっと近づき膝をついて、折れた翼を優しく撫でる。
「……大丈夫。もう怖くないよ」
春樹はその優しい声に、思わず胸が少し温かくなる。
「この子、親とはぐれたんだと思うの。放っておいたら……」
リディアは目を伏せ、小さな声でつぶやく。
「死んじゃうかもしれない……だから、ちゃんと助けないと」
春樹は思わず息をのむ。
(死ぬ……この子が……?)
「俺にも……何かできること、あるか?」
リディアは一瞬春樹を見上げ、少し驚いた表情を浮かべる。
「……変わった人だね。でも手伝ってくれるなら……うん、お願い」
春樹は慎重に子飛竜に近づき、そっと抱き上げる。
小さな体は震えていて、翼の傷からはまだ温かい血が滲んでいた。
リディアはそばで見守り、時折「大丈夫、大丈夫だよ」と声をかける。
その声は、まるで母親のように安心感を与える。
そのとき――森の奥から低く唸る声が響いた。
「……グルゥゥゥウ……」
リディアの顔が強張る。
「やばい……親の“飛竜”が戻ってきたのかも!」
木々を揺らしながら、巨大な影が迫る。
リディアは小さな手で春樹の腕に触れ、子飛竜を抱えたまま彼を見上げる。
「怖がらなくていい、でも逃げるの手伝って」
春樹は少し勇気を出し、リディアの手を握る。
「……わかった、任せて!」
――しかし、森の奥からはさらなる唸り声が重なり、影が二つ、三つと増えていく。
春樹は息をのみ、次に何が現れるのか予測できなかった――
こうして、春樹とリディアは傷ついた飛竜の子を抱え、森の奥へと走り出す。
徐々に楽しくなってきてますヽ(=´▽`=)ノ
春樹くんは大丈夫かなぁ…




