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あぜ道から始まる異世界冒険譚(あぜ譚)  作者: 蒼い向日葵


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3/9

第2話 見知らぬ森と、最初の出会い

前回のあらすじ

平穏な帰り道、光に吸い込まれた春樹。気づけば異世界の森で新たな冒険が始まる…

眩しさがゆっくり薄れ、春樹はまぶたを震わせながら目を開いた。


「……ここ、どこだ?」


土の匂い、湿った空気。あぜ道ではない。見たこともない大きな樹々が並び、木漏れ日が斑に地面を照らしている。


(森……? こんな森、この辺にあったか?)


頭がぼんやりして立ち上がろうとすると、足元の草がカサッと揺れた。


――チュン。


小さな鳥の声がやけに耳に響く。木々のざわめきも虫の声も、どこか“濃い”。

まるで空気そのものが、いつもと違う世界のもののようだ。


「夢……じゃないよな……?」


頬をつねると普通に痛い。息を吸えば土の匂いがしっかり肺に入る。現実だ。


(落ち着け。まずは状況確認だ)


弓道で鍛えた冷静さをなんとか引っ張り出し、ゆっくり周囲を見渡す。

太い樹の根元には、見たことのない紫の花。背の高い草の間を、青白い光がふわふわ漂っている。


「蛍……? にしては色が……」


あぜ道で見た光とは種類が違う。もっと柔らかく、体に害がないような、ぬるい光。


そのとき――。


――ガサッ。


茂みの奥で大きな何かが動いた。春樹は反射的に身構える。弓も武器もない。


(やば……逃げる準備だけしとこう)


バクン、と心臓が早鐘を打ち、茂みが大きく揺れる。


「うわぁぁ! 出たぁぁ!」


飛び出してきたのは茶色い獣。犬のようでもあり、狼のようでもあり、でも明らかに日本にはいない“感じ”。

肩までの高さは春樹の胸あたりだ。


獣はぐるる、と喉を鳴らす。威嚇だ。背中に冷たい汗が伝い、走るか木に登るか考える。


「――下がって!」


甲高い声が森に響き、獣の脇腹に短い矢が突き刺さる。


「ギャンッ!」


獣は怯んで跳び退き、森の奥へ姿を消した。

春樹は呆然と立ち尽くす。


「……大丈夫?」


振り向くと、そこには背丈の低い少女が立っていた。


淡い緑色の髪が肩にかかり、少し大きめのマントを羽織っている。手には小さな弓。


(えっ……誰? ていうか、この髪色……?)


少女は春樹を見上げ、きょとんとした顔をした。


「あなた、見かけない格好してるね。旅人さん……ではなさそう」


春樹は言葉に詰まる。


「えっと、その……俺、どこにいるんだ……?」


少女は瞬きを一度だけして、ゆっくり答えた。


「ここは《レンファの森》。

この辺りじゃ一番、魔物がうろつく危ない場所だよ?」


魔物――さっきの獣を思い出し、背筋が寒くなる。


「森から出たいんでしょ? 案内するよ。

ほっとくと、今のより強い魔物に食べられちゃうから」


そう言って、少女はにこりと笑った。



異世界――その言葉が、春樹の頭でリアルな重みを持ちはじめる。

こうして春樹は、異世界で“最初の仲間”と出会うことになる。

物書きって意外と難しいですね。「自分が楽しめなきゃ」って書いていますが、読んでくれる方がいてくれると思うと力になりますね(*^^*)

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