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あぜ道から始まる異世界冒険譚(あぜ譚)  作者: 蒼い向日葵


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2/9

第1話 あぜ道の光

ようやくスタートしました『あぜ譚』

ほぼ自己満足のための作品…

気楽に読んでくださいまし(*´ω`*)

初夏の午後。


部活動の終わりを告げるチャイムが鳴ると、空気が一気に緩んだ気がする。


春樹は弓道部の道具を片付けながら、今日の射形を頭の中で反芻していた。


(もっと肩の力抜かなきゃな……)


「春樹、帰る準備できた?」


軽い声に振り向くと、凪が弓道場の入り口で手を振っていた。


陸上部で鍛えられた引き締まった体に、短めのポニーテールがよく似合う。


昔は男の子とよく間違えたが、いまは“カッコいい系の女子”に落ち着いている。


「もうちょい待ってて。あ、予算書ありがとうな」

「いいよ。生徒会のついでに先生のとこ持ってっただけだし」


凪は肩にかけたスポーツバッグを軽く揺らしながら笑う。


「陸上の練習、大丈夫だったのか?」

「平気平気。今日は軽めだったし」


春樹は、彼女のあっけらかんとした返しに思わず笑ってしまう。


「ねえ、また弓道見に行っていい? この前の春樹、普通にカッコよかったし」

「いや、まだまだだよ……」

「なんでそんな謙遜すんのさ。もっと自信持ちなよ」


軽く肘でつつかれ、春樹は照れ隠しに顔をそらす。


靴を履き替え、二人は校門を出た。

夕方の光がやわらかく、暖かい空気が風の中に残っている。


「今日も暑かったな」

「ほんと。大会前だから走る量も増えるしさ〜……って、見て。カエル」


凪が指さした先には、道の真ん中に大きなカエルが座り込んでいた。


「わっ、踏むとこだった……」

「はは、びっくりした?」


いたずらっぽい笑顔。

こういうテンションは昔から変わらない。


二人は、学校での話や部活のことを気楽に話しながら帰り道を歩く。

舗装路がいつもの土道に変わり、田んぼの匂いが風に混じってくる。


あぜ道の両側では水面が夕日に照らされ、ゆらゆら揺れていた。


「明日も一緒に帰ろうな」

「もちろん。どうせ方向同じだし」


凪は軽く手を振り、分かれ道の前で立ち止まった。


「じゃ、また明日。寄り道しないで帰れよー!」

「おう。また明日!」


凪は走り出し、すぐに夕陽に溶けるように遠ざかっていった。


ひとり残された春樹は、小さく息を吐いた。

「一人になったな……今日はばぁちゃんがカレーって言ってたし、帰ったら楽しみだ……」

スパイスの香りを想像して、自然と頬が緩む。



そのとき――。

足元で、“光”が揺れた。



「……え?」

あぜ道の草の間から、金色の粒が湧き出すように浮かんでいる。


夕陽の反射ではない。

地面そのものがじんわりと光を漏らしていた。


しゃがんで覗き込むと、光は春樹の足首にまとわりつくように広がる。


(な、なんだこれ……?)


虫の声が遠のき、周囲の音がふっと消える。

風の流れすら感じられない。


「いつもの道……だよな?」


視界がかすかに歪む。

胸の奥がざわつき、嫌な予感がする。

逃げようとした瞬間、光が一気に膨れ上がった。


「っ――!」


反射的に目を閉じたが遅かった。

地面が消え、身体の感覚がふっと軽くなる。


光が全身を包み込み、世界の輪郭が溶けていく。


春樹は叫び声を上げる間もなく――

あぜ道から姿を消した。



こうして、春樹の異世界での冒険が静かに幕を開けたのだった。

厳しくも優しいご意見お待ちしております。

何分、メンタル豆腐なので…

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