9.戦い後の休息
「……」
宗谷の足元には真っ二つにされ、動かないオオクシがある。
それを一瞥し、彼は識月を探しにその場から離れた。
これにて戦いは終了。
彼らは、魔法人形と戦うというのはどういうことかと、肌身で感じたのだった。
……それにしても、眠い。
宗谷はそんなことを考えながら瓦礫の道を進む。
意識が朦朧とするのを振り払うように頭を回し、深呼吸をして足を止めないように動かし続ける。
眠い。
ポタポタ、と血の滴る音がする。
…………目が霞む。
宗谷の意識は、そこで途切れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……ん」
目が覚めると、そこは知らない部屋だった。
ベッドからのっそりと起き上がり、宗谷は状況を整理する。
頭を掻こうとして振り上げた腕に巻いてある包帯。
知らない部屋の中には本棚やテレビ、木の丸テーブルがある。
というかミクスセラムは?
識月も無事なのか?
いつの間に整理が疑問に変わり、整理が全然できないでいると、ドアをノックする音が部屋に響いた。
「もしかして目、覚めた?入って大丈夫?」
識月の声だ。
今開ける、と外の彼女に声をかけドアを開けると、制服姿の彼女が立っていた。
「……よかった、簡潔に伝えるわ。私もう学校に行かなくちゃだがら」
「え、学校?待ってくれ、学校なら俺も」
そう伝えようとして、識月に左手で静止される。
なんだか表情も険しい。
怒っているのだろうか。
「あのねえ、黒木くん。貴方2日間も眠っていたのよ!?もう今日は金曜!学校には私から連絡しておくから今日までは休みなさい!説明は学校から帰ってきた後するから!いい!?わかったら寝てなさい!」
と思ったら、本当に怒っていた。
まあまあな勢いの識月に押され、「わ、わかった」としか返すことのできない宗谷。
それに満足したのか識月は強く頷き、部屋から出ていった。
時刻は午前8:00。
也城高校の登校時間は7:00〜8:40。
ここがどこかはわからないが結構早く登校するんだな、と宗谷は思い返し、言われた通りベッドで再び寝ようとする。
「喉が渇いたな……」
が、気分が変わり水を飲みたい気分。
しかしここには冷蔵庫やペットボトルの水はない。
仕方なく宗谷は廊下に出て、水を探す旅に出るのであった。
「というかここはどこなんだ?」
解消できなかった疑問を再び思い返しながらも、長い廊下を歩く宗谷。
所々に部屋があって、まるで家というより屋敷のよう。
少しするとようやく階段が見え、そこからキッチンを目指し一階に降りる。
……今更だが、勝手に水を飲んで平気なのだろうか?
階段を降りながら感じる罪悪感。
しかし、喉の渇きは死活問題、仕方ないことである。
一階に降りると、大広間の様な場所に出た。
前後ろ左右に4つドアがある。
右は玄関として、3択。
どうしたものか……と考えていると。
「あら、ソウヤじゃない?目覚めたのね?」
後ろのドアが空き、聞き馴染みのある声がしたので振り向く。
しかし風貌には全く見覚えがなかった。
水色の髪にクールな顔、すらっとしたスレンダーボディに黒のローブを着ている。
まさしく女神を彫刻とかで表すならばこういう感じではなかろうか、というデザイン。
……今のは自分の好みが少し入っていた気がする。
それは置いといて、この人は誰だろうか。
声は完全にミクスセラムであるがペンギンの姿をしていない。
首を傾げながら見ていると、目の前の彼女はムスッとした表情になった。
「何、私のことわからないの!?はぁ……いいわ、そんな貴方にはもう一度自己紹介してあげる!私は混沌の魔法人形:ミクスセラムよ!」
ドヤァ、とした顔で自己紹介を身振り手振りでされた。
というか。
「……とりあえず、無事でよかった。が、ペンギンじゃなかったか?どうして人間に!?」
疑問が解決しないうちに新たな疑問が増えてゆく。
それでいて解決は夜まで待たなければならない。
「あら、人間。起きたんですか」
ミクスセラムの奥から声が聞こえた。
カツカツ、という足音と共にやってきたのは八百美道乃。
人間嫌いの錬金術師である。
「元気そうじゃないですかぁ。さっさと出ていってくれません?なんなら今からでもいいんですよ?お出口はあちらです」
右手で玄関を指差す道乃。
やっぱり宗谷に対しての扱いはひどい。
が、まあ特段気にすることでもないと思っているのでスルーする。
「いや、別に出口を探しているわけではない。ただ水を一杯もらいたいのだが……」
そう言うと、『呆れた』と言わんばかりに顔を歪める道乃。
「そうですか、自分で探してください」
「?大丈夫、元よりそのつもりだ」
多分道乃に昨日のことやミクスセラムが人間の理由を聞いたとしても、答えてくれなさそうなのは明白なので宗谷は何も聞かない。
むしろ三択からニ択に減らしてくれてありがたいとすら思っている。
とりあえず、一番近い前のドアに入ろうとして……道乃に腕を掴まれた。
「やっぱ家の中をうろちょろされるのが嫌で仕方がないです。注いできてあげるので、そこで待っててください」
そうして、宗谷から見て左側のドアへ入っていった。
ポカンとしたまま左側のドアを見つめ続ける宗谷とミクスセラム。
10秒後そうだ、と宗谷は復帰しミクスセラムに姿のことについて聞くことにした。
「なあミクスセラム、その姿のことだがどうして人間になれたんだ?」
「ん?私はもともとオオクシと同じく人の形の魔法人形よ。なんだけどどっかの錬金術を一ミリも知らない誰かさんが呼んだせいでペンギンになってたのよ」
はぁ。
ため息と共に嫌味を言われる宗谷。
しかし効果はなかった。
「そうだったのか、すまない」
「ほんとね!で、呼ぶ人の能力によって私たちは強くなったり弱くなったりする。つまり、ミチノを主としてもう一回呼んで貰えば元に戻れるって思ったの」
フルフルと、黒のローブをはためかせダンスを踊る彼女。
「結果はこう!完全復活ね!」
「……よかったネ」
宗谷はなんのことか全くわからないので、ただただそれを聞きながら天井を見ている。
天井のシミを23個数えたあたりで、道乃が水が入ったコップを持ってきた。
「いただきます」
そう言って受け取ると、まさかのコップの飲み口ギリギリまで水がついである。
嫌がらせだ。
下手をしたら水がこぼれる。
……啜るのは行儀が悪いし、ちびちび飲んでから一気に飲んでしまおう。
そう考え、少し飲んだ後ゴキュ、ゴキュっといい飲みっぷりを披露する宗谷。
「要件は済んだでしょう?ならさっさとお部屋に帰ってきてください。貴方の疑問には後で、識月が帰ってきてから一階のここで話をするから」
しかしそれにも無関心。
とりあえず水も飲んだし、夜はここで説明会をするらしいから一旦部屋に帰ることにした。
「八百美さん、ご馳走さまでした。ミクスセラム、また夕方くらいにな」
会釈をして、階段を登ってゆく。
そうしてまた長い廊下を進み、さっきの部屋に到着した。
部屋に備え付けられているトイレに入ってすませ、ベッドに潜る。
中でため息が一つ、溢れた。
アパートはどうなったのか。
結局魔法人形ってなんなのか。
わからないことだらけだが、今は体力の回復に努めよう。
そう思って、再び眠りにつく宗谷であった。
「マジッQー!九回目……はおやすみだよ!なんでって?作者が『何書けばいいんだろう』って迷って30分ぐらいこれに時間を費やしたからだよ!裏の事情でごめんね……代わりといっちゃなんだけど、宗谷くんの好みについて3000文字くらい……へ、だめ?そう。いいもんね、絶対いつか特別編で特集組んでやる。じゃ、また次回ー!」




