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6.隙は狙ってナンボである

「派手やなぁ」


過集中空間の外。

也城高校の屋上から空間内を見る者がいた。

紺色のショートカットに白衣をきた女。

彼女の名前は武田絵梨たけだえり

大地の魔法人形を呼び出した錬金術師である。


「好きにしてええよとは言ったがここまでとはなぁ……あんたはんもそう思うか?」


絵梨は誰もいない虚空に目線をむけ、語りかける。

否、“隠れている誰か”に話しかける。


「別に出てきてええで、もう居るのわかってるから」


そう言って瞬きをした瞬間、目の前に女が現れた。

すぐに距離を取るが、女はその場から動かずに苦い顔をしている。


「……どうしてわかったんですか」


「え?いや錬金術師のオーラって言うんか?全然隠せてへんかったであんた」


(逆に言えば、隠せないレベルで強いってこと……)

思わずため息が出ながらも、警戒を強める絵梨。

目の前の女は帽子をかぶって、黒のローブを着ているため“例の関わってはいけない錬金術師”かどうかわからない。


「そうですか、今後の参考にしましょう」


「はっ、今後か……うちも舐められたもんやなぁ!」


そう言ってバーセタイルを取り出し、槍を練成。

相手に向けて放る。

しかし相手も錬金術師、すぐさま盾を練成してこれを防いできた。


「ちぃ!」


絵梨は槍を囮として2本なげ、幻素による錬成を行う。


「錬成『閃光焔せんこうのひ』」


持っている槍と投げた槍、合計3本の槍に赤く輝く炎が灯される。

投げた槍2本は敵の盾に接触をし、激しく光を発する。

まるで閃光弾。

それによってできた隙を、“彼女”は見逃さなかった。




ほら、来るぞ。


お前を貫く光の槍が。


心臓を貫く炎を纏いし槍が。


そう言わんがばかりに絵梨は駆け出し、盾の死角から素早く槍を突き刺す。

よって相手は反応できず絶命する。



……はずだった。

盾の裏には守られている者などいなく。

隙ができたのは自分だと認識した1秒後に、彼女は心臓に剣を突き立てられた。


「……あ、なん、でぇ」


「なぜって……最初からここを狙おうとしていたのが見え見えだったもの。だめですよぉ、相手の隙を狙うときは、自分にも隙ができるってことを覚えておかなくちゃ」


バタッ、と屋上に一人倒れる敗者。

勝者はそれを気にも止めず、パッパと服についた埃を払っている。

帽子についた埃も払おうとを帽子を取ると白く長い髪が顕になった。

彼女……八百美道乃やおびみちのは再び帽子を深く被り、過集中空間の方に目を向ける。


「大地の魔法人形……まあ識月じゃ無理ね。はぁ、もう一仕事ですか」


そう言って屋上から飛び降り……何事もなかったかのように着地して空間の方へ向かった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「……何が、どうなっているんだ」


呆然とする宗谷。

無理もない。

現在空中に浮いている彼らが目にしているのは、さっきまであったアパートがただの瓦礫の山となっている現状と、それを見ながら“何か”を食っている大地の魔法人形の図だった。


「あなたも錬金術師ならわかるでしょ、黒木くん。あれがあなたの呼び出したモノ。魔法人形の本性よ」


識月はバツの悪そうに、心の底から嫌悪感を吐き出して告げる。

……そこまでとは、彼は何を食っているのか。


「……あ」


気づきたくはなかった。

考えがそこにいくのを拒絶していた。

……さっきのアパートの倒壊。

確かに自分たちは識月のおかげて間一髪、命からがら助かっただろう。

だが、他の住人は?

助からなかった、助けられなかった。

それを……彼は、あいつは、アレは……。


「今の倒壊に巻き込まれた人の、魂を食ってる……?」


最初に、悔しさ。

次に、自分とアレへの怒り。

奥歯をギリィと噛み締めるような、怒り。


……でも、どれだけ怒りが湧き出ても。

動けない。

一手でいきなり勝負を詰みまで持っていける化け物を相手にする力なんてない。

自分と魔法人形の差はわかっている。

だけど、それが悔しくてしょうがなかった。


「……もうすぐ地上ね。黒木くんは、そこのペンギンを連れて逃げてくれる?そのペンギン、魔法人形なんでしょ?それがあいつに食われたら終わりだから」


「東雲さん、あれと戦うつもりなのか!?」


「ええ。まああなたたちを逃す時間くらいなら私稼げるから。逃げたらすぐ、この空間を出て駅の近くにあるお屋敷に向かって。わかる?あの白いとこ。『東雲識月の紹介』って言えば入れてくれるはずよ、多分」


「……」


何も言えない。

『危険だ、一緒に逃げよう』とか、『俺も戦うよ』なんて言葉が出ない。

理由は簡単、自分は足手纏いだからだ。

さっきのように彼女が妖術的なモノを使って戦うなら、ど素人の自分がいたって意味ないだろう。


「ええ、そうするわ……ところで、シノノメと言ったわね。その屋敷にはアイス、あるかしら?」


「今聴くことがそれ!?……あるわよ」


「ありがと」


ペンギンの疑問にもしっかり対応をする識月であった。

そうこう言っていると、地上に残り数メートルの高さまで近づく。

そうして5秒後、二人+一匹は地上に足をついた。


瞬間、地面が隆起し小さな山となって襲いかかってきた!


「逃げて!」


宗谷はためらいを振り払い、空間の端へミクスセラムをおんぶしながら走り始める。

そして全力疾走で識月の視界から消えていった。


「……あり?魔法人形は?」


入れ替わるように、隆起した地面の裏からオオクシが現れた。


「逃したわよ、残念だったわねオオクシ」


「なるほど、君がここで足どめってわけ……ふふっ」


「何、おかしいことないでしょ」


「いやあ、実はさ俺が来たときここ殺風景でさぁ!アパートしかないじゃんと思って。だから、放っておいたんだよね。キメラ」


「……は?」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「はぁ、はぁ……」


「貴方、もうバテたの?」


「いや、なんか嫌な感覚が……」


識月の合図とともに全力疾走で逃げた二人組。

前方には黒いカーテンのような壁が見える。


「アレが外だよな。よし、あそこから出れば」


もう一踏ん張り、と駆け出した瞬間。

キュッ、と急ブレーキで宗谷の足が止まった。


「ちょっと!何して、るの……」


ミクスセラムも言葉を失う。


目の前には、キメラが二体鎮座していた。

こちらを食い殺さんと、二匹とも狩人の目で睨みつけてくる。


こうして、二つの戦いは幕を開けた。

幻素の少女と大地の魔法人形。

混沌の少年と合成獣二体。


そしてそれを上空から見下ろす、八百美道乃の姿があった。

「マジックQ、六回目ー!今回は幻素①!」


今回は四大幻素練成のうち炎が出たね。四大幻素なので他にあと三つ水、土、風の種類がある!風は前回飛ぶために使ってたりと、基本的に汎用性が高い気がするわ。まあ完全ランダムで一人一つしか使えないんだけどね!


「四つ使える東雲ちゃんは天才……前回も同じようなこと言った気がする!?じ、次回もお楽しみに!」

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