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4.今ウチペンギン飼ってるんだけどさ

「多分……寝た時にアザができたんだと思う」


宗谷はミクス関連だと瞬時に察したが、口には出さない。

この二人を巻き込みたくはないし、なおかつ『今家にペンギン飼ってるんだ』なんて言ったら多分正気を疑われるだろう。


「変な寝方には気をつけろよ?」


「お、心配なんてキャラじゃないのに。珍しいじゃん五十里」


「はっ、てめえの心配はしないだけだ羊司」


「そんな事言って〜ツンデレだな、いおりんは!」


「……宗谷、羊司はもう捨てていこう」


「ちょ、嘘だって!まだちょっと痛えんだから!」


アザを何とか誤魔化して、騒がしい通学路は再開。

そうして、特に遅刻することなく高校に着いた。

1-3教室に入ってそれぞれの席につく。

そして数分後、担任の水野先生が来てホームルームが始まった。


「はい、えーどうも。今日の予定はですねー」


淡々と読み上げていく水野先生。

それに対して生徒の反応はまちまちで、宗谷のようにキチンと聞いている者もいれば羊司みたいにボケーっと聞いていて後で友達に聞く者もいる。


「はい。じゃあこれで朝のホームルームは終わり。そろそろ夏休みだからって気を抜かないよーに」


そう言って水野先生は教室から出て行った。

一限の授業は10分後。

準備をするため、宗谷は廊下のロッカーに足を運んだ。


廊下には様々な張り紙がされている。

つい先月までは部活動の勧誘ポスターが夥しいほど貼られていたりした。

今は『学年委員長とクラス委員が決定しました』という張り紙がなされていて、各クラスの男女1名ずつ委員の名前と写真が載っている。

クラス委員と言えば、3週間前くらいにホームルームで決めたやつだ。

宗谷のクラスは確か男子は五十里、女子は三本みもとさん。

三本さんはあまり関わりがないのでよく知らない。



その紙を視線から外し、ロッカーから一限〜六限までの教科書を一気にとる。

……意外に重い。

少しよろけながらも、何とか自分の席にたどり着いた。

一限が始まるまで残り二分。

五十里は委員で呼ばれていて、羊司は忘れ物を他クラスに借りに行っている……。

特にすることもないので、机で頬杖をつきながら待つことにした。


1限は数学。

2限は体育。

3限は国語……と着々と授業は進んでゆく。

そして4限が終わり、お昼。


五十里はまた委員会で呼ばれているらしく、今日の昼は羊司と食堂で食べることになった。

也城高校の昼食事情はどうかと言われれば、弁当と食堂が半々という感じ。

食堂の人気メニューはカツ丼。

出汁の染みた卵にサクサクの衣に包まれた分厚い肉。

それに甘く、適度な硬さと粘り気のあるお米が合う。

また、カツ丼を頼むと味噌汁がついてくる。

味噌汁の具材は豆腐のみだが、シンプルで美味しい。

……と、羊司が真面目に食レポするくらいにはうまい。


今日の目当てはもちろんカツ丼。

すでに朝のうちに券を取ってあるので、スムーズに二人分のカツ丼をとり席につく。


「ウヒョー!やっぱコレよこれ!」


「羊司はほんとにここのカツ丼が好きだな」


「学食とは思えないクオリティ!それでありながら400円という価格!好きにならない理由がない!」


いただきまーす、と二人揃って宣言してカツ丼をいただく。

やはり美味しい。

特にこの肉厚なトンカツが米と合う。

そんな感想を頭に浮かべながらどうでもいいことを話し食べ進めていると、


ざわざわ……


突然食堂の空気が変わったのを感じた。


「あれ、1年の……」


「あいつだろ?勉強・運動もできて美人、神が三物与えた存在って入学した当時は噂になってたぜ」


「滅多に食堂に来ないのに……」


周囲から聞こえるざわめきの音。

自然に宗谷と羊司も、皆の注目の方を向く。


視線の先には、美術品があった。

黒い髪が風に揺られているだけでも博物館に飾られる一枚絵のような美しさ。

少し茶色が入った眼はまるで宝石のように綺麗。

そんな彫刻のような少女が、そこにはいた。


宗谷は少女を見て、今朝のポスターを思い出す。

クラス委員をまとめる、学年委員長の欄。

そこに彼女の写真があった。

今後もあまり関わることのない人だろう……と思っていたのだが。


しかし、彼女は宗谷たちの方向に向かって足を進めている。

自分たちとは関わりがないため、こっちの方向にただ用があるだけだろうと宗谷は考えてカツ丼を食べ進めるが、羊司の手が動いていないことに気がついた。


「羊司?」


「……わ、忘れてた。今日、観察委員の経過報告の会なのに!」


観察委員とは、服装の身だしなみとか不要なものを持ってきていないかを一月おきにチェックする委員会。

羊司はそこに所属しているのだが、どうやら今日昼締め切りの報告書を提出し忘れたらしい。

なので、こうして学年委員長が来たということ。


「宗谷、助けてくれ。いやください!」


「やだよ。自分が悪いんだから怒られてきな」


「学年委員長めっちゃ怖いんだって!この前も提出し忘れた時……」


「この前?羊司、君何回も出し忘れてるのか!?」


「そう、これで3回目ね」


凛とした声。

目の前をみると、さっきの少女が対面に座っていた。


「カツ丼を食べているなんていいご身分ですね、羊司くん。昼ご飯を友達と話しながら食べれるんだから……もちろん提出、できるわね?」


絶対王政の女王を感じさせるような圧を前方から感じる。

宗谷は羊司の『怒らせたらやばい』というのがわかった気がした。


「……すみませんしたー!今取ってきまーす!」


羊司は全力疾走で食堂から立ち去った。

カツ丼はすでに空っぽ。

ちゃっかり完食していったのはアイツらしい、と宗谷は思った。


「はぁ……ごめんなさいね、騒がしくして。私、1年1組の東雲識月しののめしづき。よろしくね」


こちらに手を出す学年委員長……もとい、東雲。

別にしない理由もないので、こちらからも手を出して握手をした。


「……ねえ」


不意に、東雲が声を出す。


「そのアザ、どうしたの?」


腕のアザはそんなに気になることなのだろうか。

宗谷は疑問に思ったが、顔色ひとつ変えずに答えた。


「ああ、俺にもよくわからない。寝た時にきっとできたのだろう」


「……そう、変な体勢で寝ないようにね」


握手を終え、二人は再びそれぞれの行動に移った。

宗谷は再びカツ丼を食べる。

東雲は学級委員への報告会と……。


「はい。右腕の上部にアザ。羽根のような模様でした……うん、多分。黒木宗谷、彼が魔法人形の主です」


自分の師である錬金術師への報告である。

「マジッーQ!四回目ですわ!今回は錬金術師について!」


錬金術師……文字通り錬金術を使う術師のこと。『形質練成』と『四大幻素練成』という二つの術を使うんだ!

で、錬金術師は基本的に何を発動するにも金属を使うよ!今の錬金術師は軽くてどの練成にも対応可能な金属『バーセタイル』を使用しているみたい!


「いいねぇ〜、昔よりも錬金術師は楽に練成出来てるってわけだ。昔?昔は自分の幻素に合う鉱石を探したりしなきゃいけなかったから、大変だった……らしいよ!ということで、次回もお楽しみにネ!」

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