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12話 キラキラ湯船の完成だ!

 ◇



 それから三日が過ぎた。

 道中暇なのでアメリアちゃんのスキルについて詳しく聞いてみた。


 "浄化"は呪いや邪気を払う効果が強まるらしい。この世界、ウイルスという概念がまだ無いみたいで、病気も物によっては呪いだったり、邪気に当てられたと思うレベルなんだとか。

 不治の病だと避けられない病気という認識で、どの道、病に罹ると治らないものという考えだった。そんな病の中でも一部は"浄化"を持った聖職者の回復魔法によって治すことができるとかで、だから聖職者の巡業は有り難がられているのだとか。


 アメリアちゃんも"浄化"を持っているので、怪我人よりは病気の人に回復魔法をかけて回っているらしい。でも、魔力量が低いと大きな病気が治せないとかで、アメリアちゃんは魔力量が多くないそうなので、ほとんどの病を治療できず、そのせいで自分は聖職者としては未熟者だと思っているんだとか。

 何でも魔法頼りなのも良くないけど、魔法で治せるだけすごいことだと思うんだけどね。


 そんな話をしてる時に、チョージがボソッと「ならばあの配信はマズかったかもしれないな」とか言ってたけど、何の話だったんだろう?


 ちなみにもう一個の"祝福"はよくわかってないんだとか。回復魔法の効きが良いように思うくらいなんだって。

 チョージもこっそりウインドウを操作して調べていたけど、効果はわからなかったみたいだ。



 歩いている内に草原地帯は終わりを迎え、長閑な森に入っていた。化け物も出てこないし安全な旅だ。最近のご飯はずっと蛇肉だけどね。

 今日は川を見つけたので、川辺で野宿をする。


 アオイが熊のように魚を狩っている所を尻目に、俺とチョージで粘土質の土を探すことにした。


 アオイが素早く弾いた魚が岸にビチビチと跳ねるので、それをアメリアちゃんが頑張って回収している。


「熊は放っておいて粘土探しだな。とりあえず適当にアイテムボックスに入れてみればいっか」

「同時に、ある程度持っている別の土で穴を埋めろ。急に川の流れや深さが変わるとアオイが危険だからな」

「了解〜」


 ポコポコとアイテムボックスに入れては埋めてを繰り返すと、アイテム欄に「粘土質の土」が出てきた。


 アイテムを選んで「合成」をすれば、手間もかからず粘土が手に入った。

 粘土からさらに「合成」をすれば、あーら簡単レンガの出来上がり。


「楽でいいな……これがチートか……」

「すでに素焼きまで済んでいるようだな。できたら適当に積んでくれ」

「ほいほい」


 次々に合成してレンガを作り、一箇所に積み上げる。結構多めに用意して、チョージがそれを全部回収して風呂作りだ。


「む……流石に合成先に出てこんな。これは積むしかないか」

「そうなんだ。粘土はまだ余ってるから、水に溶かしてノリにすれば良い?」

「ああ。お前が積んでくれ。俺様はあっちを手伝ったほうが良さそうだ」


 チョージはレンガを全部出して、背後を指差した。アメリアちゃんが一人で大量の魚を集めているが、ナイフがないようなので捌けず困っているようだ。


「あー、そだね。じゃあ俺が風呂の形を作っておくよ」

「頼んだ」


 アオイが入れるくらいの大きさにはしないとな。

 黙々と作業をするのだった。


 栓を用意して、下に掘った穴にお湯を捨てられるようにして、大の男がのんびり疲れる大きさの湯船を目指す。


 森の中なので、木製でも良かったんじゃ? と今なら思うが、腐っても嫌だし今回はレンガで作ろう。ざらざらしてるし座っても痛くないように磨かないとな。


 とは言え一個ずつ磨くのはキツい。

 一個レンガを仕舞って「合成」先を見てみると、あった「研磨されたレンガ」。これを使えば痛くなさそうだ。


 外側は頑丈にしたいし、二重にして外側はそのままで、内側はツルツルにしようかな。

 てことでまずは外側を積んでいき、中の個数に当たりをつけて、必要な分だけ研磨した。


「できた……! あとは乾かすだけだけど……」


 昼過ぎくらいからずっと作業してたけど、終わる頃には陽が暮れてきてしまった。


「もしかして……これを仕舞ったら合成できたりして」


 ものは試しだ。どうせ持ち運びたいのだから、一回仕舞ってみよう。


 ちゃんとアイテムボックスに入ったので、アイテム欄を確認すると、「湯船」と表示されていた。ちゃんとお風呂として認識されてるぞ!

 合成先を確認すると、ちゃんと「素焼きされた湯船」が表示されたので、迷わずタップ。


 取り出して見てみれば……。


「おー!」


 キラキラ湯船の完成だ!

 俺はお湯を出せないので、チョージとアオイを呼ぶとするか。


 焚き火のところに戻ると、もうアオイが魚を齧っていた。魚を齧っては、刺さってた棒に新しい魚を刺して焼いている。一人ベルトコンベアになっている。


「すげー量……川の魚駆逐されたんじゃね……」

「戻ったかイルカ。見ての通りだ。捌く身にもなって欲しいものだな」

「お疲れ。風呂もできたよ。あとはお湯入れたら完成だね」

「そうか」


 労えば、チョージが焼けた魚を手渡してくれる。

 塩がないのでめっちゃ素材の味……よく焼いているので生臭さは少ないけど。でも魚が久しぶりなので嬉しさはある。


「魚うめー。アメリアちゃんもありがとう」

「はい、初めて魚を捌きました」


 あー、護衛騎士がいたら騎士がやるよね。

 そう言うアメリアちゃんも小さな口で魚を齧っている。

 出会った当初、肉でさえ齧り付くような食べ方に慣れておらず困惑していたのに、今では慣れたものだ。器用に食べ進めていた。

 アメリアちゃんもワイルドになって……。


「風呂」


 急に、食べるのに飽きたみたいに魚刺していた枝をその辺に捨てて、アオイが立ち上がった。


「ちょっと待て、一番風呂はアメリアちゃんに」

「来い」

「だからアメリアちゃんが先だと言ってるだろうが! 持ち上げるな!」


 本能で生きる野獣か何かかな?

 抗議も虚しくチョージが攫われていく。確かに、一番はアメリアちゃんに入ってもらいたかった……。


「ごめんねアメリアちゃん。俺もアメリアちゃんに先に入ってもらおうと思ってたんだけど……」

「いえ、その、お風呂って……?」


 アメリアちゃんに話してなかったっけ。


「湯船作ったんだ。チョージとアオイがいればお湯はすぐできるからさ」

「そうなんですね! すごいですね。外で湯に浸かることなんてありませんから」

「ちょうど良いし見に行こうか」

「はい」


 アメリアちゃんと一緒に湯船があるところに移動する。

 すると、湯船に無理矢理氷入れさせられているチョージがいた。氷出すまで離すまいと、腕をがっちり掴んでいる。


 チョージがシオシオな顔で氷を出すと、アオイが火の玉をゆっくり近づけて溶かしていく。

 意外に繊細な筋肉なんだよな、アオイって。一気に火の玉放り込んだら危ないもんな。偉い偉い。

 氷が溶けて、湯気が出てくると、アオイが徐に脱ぎ出して一瞬で全裸に。


「きゃ!」


 背後を向くアメリアちゃん。ごめんねあいつなんも恥じらいが無くて……。


「せめて一声かけろ!」


 アオイは全て無視して湯船に入ってしまった。


「……ウム」


 ご満悦のアオイ。


「お前ら、アメリアちゃんが入る時は入れ直してくれよ……」

「当然だ。アオイがどれだけ拒否しても温めさせてやる」

「……ウム」


 まあ、アオイがこれまでに見ないくらい心地良さそうな顔してるからいっか。


 ちなみにアメリアちゃんはダッシュで逃げてった。


 焚き火に戻ると、アメリアちゃんが黙々と魚をハムハムしていた……。その顔はだいぶ赤かった。


 耐性無さそうだもんね、ほんとウチのアオイがごめんね。

彼らのチートは魔法でもスキルでもなく、高性能なアイテムボックスでしょう。


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