11月11日
11月11日といえばこの日ですね。とても短いです。
「ユリさん、今日はポッキーの日ですよ!」
「言うと思った」
帰宅すると、お菓子のポッキーの箱を手にしたルークに出迎えられた。
色々と予想外なことをしてくる異世界の魔術師だけど、これは予想していたから特に驚かない。
「ちゃんと準備しましたよ」
「本当に全種類買ってきたの?」
「もちろんです。ポッキーの日ですから!」
ちょっと自慢気な顔で言い切られる。
リビングに入ると、テーブルの上には様々なポッキーの箱が山積みになっていた。
先日、一緒にスーパーへ買い物に行ったときに、ルークはお菓子コーナーで『ポッキーの日』と書かれたポップを目ざとく見つけてしまった。
ポッキーというお菓子があること自体はこちらの世界へ来た当初に知り、手を汚さずに食べることができて素晴らしいと絶賛していた。
そんな素晴らしいお菓子の日があることも知ると、お祝いをしなければならないとなぜか言い出し、今に至る。
「こちらの世界は、色々なイベントがあって楽しいですね」
「いや、こっちの世界の人間でも、こんなにイベントを楽しんでいる人はいないと思うよ?」
たぶんルークが一番楽しんでいると思う。
そんなわけで、今日は平日の夜にもかかわらずポッキーパーティーが開催されることになった。
パーティーで何をするかというと、ルークいわく食べ比べをするらしい。
さすがに夕食がお菓子だけというわけにはいかないので、ピザも用意している。
おかげでさらにパーティーらしくなった。
「ユリさん、コーヒーも飲みますか?」
「飲む飲む」
カフェで働いているルークの淹れるコーヒーはとても美味しい。
朝起きてから飲む一杯と、仕事から帰ってきてから飲む一杯は、私の癒しのひと時となっている。
リビングはコーヒーの良い香りに包まれた。
「はい、熱いので気を付けてください」
「ん、ありがとう」
「ユリさんはどのポッキーが好きですか?」
「私は周りにアーモンドがついているのが好きかな」
「ところでポッキーゲームって知ってますか?」
「ゴホッ……!」
唐突な流れに、思わず飲んでいたコーヒーをむせてしまった。
待って、何でそんなことまで知っているの?
異世界から来た魔術師にそんな俗っぽいこと教えたの誰!?
「あ、ユリさんの好きなのってこのポッキーですね」
「いや、今それどころじゃないから……」
ルークが山積みのお菓子の中から、私が好きと言った、アーモンドが回りについているポッキーの箱を取って見せた。
いや、わざわざ開けてくれなくていいから。
自分で食べるから、別に袋から出して一本持ったままこちらに近づいてこなくてもいいから。
「ぼく、このポッキー食べるの初めてです」
「待って待って、ちかい……!」
「頂きます」
――頂かれてしまった。
11月11日といえばポッキーゲームも外せませんね。
ユリは夜にコーヒー飲んでも全然寝れるタイプです。
読んでいただきありがとうございました!




