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ファンデイトブック  作者: 無色なそら


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第21話 遠征計画

 ──河童を収容した日から3日が過ぎ、町中には夏休みに入った若者たちで溢れている。


 クロエは自称高校生忍者胡舞(くるま)まゆりと、幻想生物を収容するプチ旅をする為に、中央に円形の花壇のある人通りの多い広場で待ち合わせをしていた。


「人が多いねー。なんかみんなめちゃくちゃ見てくるし、どうかしたのかな?」


 クロエが膝に手を置いて座り、まゆりを待っている間、行き交う人々がチラチラと何度もクロエを見ては一緒に歩く者たちと何かを話していた。


「そりゃあ、こんな真夏日に長袖の真っ黒な服装して直射日光浴びてるヤツが居たら、普通気になって仕方がないだろ」


 ブックが自身を客観視できていないクロエの代わりに、しっかりと異常な箇所を教える。


「そうなのかな? 確かに腕や足出してる人ばかりだけど、私としては特に暑くはないからこのままで良いんだよね」


「別に変えろとは言ってない。好きにしてな」


 そうふたりが話していると、


「あ、いたいた! おーいクロエちゃーん!」


 と、『\あたくし忍者だお/(´・ω・`)ノ』と書かれた服を着たポニーテールの少女が手を大きく振りながら走ってくる。あの少女こそ、クロエの待っていた胡舞まゆりだ。

 まゆりは座っているクロエの元まで近付いてくると、中腰になり目線を合わせる。


「えっと、クロエちゃん……あ」


 何かを思い出したかのように途中で言葉を止める。


「んふふー。クロエ殿、本日は拙者とともにいずこへ旅に行く予定か?」


 本人なりの忍者言葉なのだろうか? かなり自信ありげにドヤ顔で胸を張っている。


「うーんと、『ヤマノケ』っていうのを収容しに行こうと思ってるよ」


「ヤマノケ?」


「そう。簡単に言うと、関山峠に現れる、頭がなく胸に顔がある1本足の白くのっぺりとした見た目の幻想生物。

 “テンソウメツ”と呟きながら腕を振り回して近付いてきては“女性に”取り憑き、取り憑かれた女性がテンソウメツ(同じ言葉)や“ハイレタ”という言葉を呟くようになり、追い払えずに49日経てば一生その精神が狂ったままになってしまうらしいよ。

 あとは……、ヤマノケは“纏わり付き、操り、滅する”という意味と考えられている“纏操滅(テンソウメツ)と発していることから、そのままテンソウメツとも呼ばれている。ってところかな」


 クロエがヤマノケの情報をまゆりに話していると、まゆりが


「ヤマノケヤマノケ、山田の毛? あ、でもあいつ毛ないや。なんだっけ、ヤマダハゲ? じゃなくてヤマノケだ。……ああ~、んん~?」


 と、何かよく分からないことを呟きながら聞いており──、


「ああ、思い出した! 聞いたことあるかも。でもソレって、田代峠に出るんじゃないの? 学校で聞いた話だとそうだったはずなんだけど……」


 首を傾げながら、自身の知っている話と異なる点をクロエに聞く。


「確かに、そこは有名な噂がいろいろあってそう思われてはいるけど、実際には関山峠だと思うよ。有名な場所ほど、そういった類いのものは去って行くらしいからね。

 それと、ちょうど関山峠には、旧関山トンネル付近に“女性の幽霊が出る電話ボックス”っていうのもあるらしいから、両方確認しに行こう」


「へえー、そうなんだ。クロエちゃんって物知りなんだね」


 まゆりは忍者口調をすっかり忘れており、クロエの知識に感嘆の声を呟く。


「それほどでも……、あるけどね!」


 クロエは褒められて満足そうに胸を張る。


「それで、何時に行くの?」


 まゆりは聞く。


「あとひとり来たらかな」


「……? あとひとり? 誰か来るの?」


「うん、その子呼ばないと拗ねるから」


 クロエとまゆりが話していると、ふたりの体を謎の陰か覆った。後ろに誰かが居る。

 まゆりが振り返ると、そこには誰も居ない。


「あれ? 誰か近付いてきたと思ったんだけどな」


 そう首を傾げながらまゆりが体を向き直すと、座るクロエの膝の上に白い何かが乗っていた。


「クロエちゃん、何ソレ?」


「白ギツネだね」


 クロエの言うとおり、耳先が朱色に染まっている白ギツネが稲荷神社の狐のように綺麗なお座りをしてまゆりを見つめている。


「あ、はい……」


 一瞬のやりとりを終え、ふたりと1匹の間に沈黙が流れる──。そして、


「え!? 何この子可愛いぃ~! どっから来たのぉ?」


 まゆりは白ギツネに顔を近付け、頭を撫でる。

 まゆりが顔を溶かして白ギツネにデレデレしていると、クロエは白ギツネを抱えて立ち上がる。


「よし。じゃあそろそろ、関山峠に行こうか!」


「はーい! ……んふふ、キツネさん可愛い」


 そうしてクロエたちは白ギツネを連れ、公共交通機関を乗り継ぎ関山峠へと向かう──。

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