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第3話 王女とバトルキッチン

今回はようやく正ヒロインが登場します。

そして、タイトルにもなっている「バトルキッチン」に主人公リクが巻き込まれていく話です。

それでは楽しんでいってください。

 ドラゴンソテーの芳醇な香りが厨房を満たす。

 そんな中、俺とイリスがその料理を堪能していると、厨房へと近寄ってくる足音が聞こえた。

 扉が静かに開く音に振り向くと、そこに現れたのは一人の美しい少女だった。


「……あなたが、異世界から来た料理人かしら?」


 その声は透き通るように美しく、しかし強い威厳を感じさせるものだった。

 俺は思わず手を止め、彼女の姿を見つめた。

 長い銀髪が風のように揺れ、彼女の美貌はまるで雪の中に咲く花のように純粋で気高い。

 彼女の澄んだ青い瞳は俺を見つめていた。


「あなたは……?」


 俺がその子に声を掛けようとすると、イリスが一歩前に出て頭を下げた。


「レイラ王女、こちらが異世界から来た料理人、リク・アマギです」

「レイラ、王女……?」

「初めまして、リク・アマギさん。私はノルティア王国王女、レイラ・グレイシャルです」


 俺は驚きを隠せなかった。

 可愛らしい彼女がこの国の王女……。


 彼女は微笑みながら俺に歩み寄り、テーブルの上にあるドラゴンソテーをじっと見つめた。。


「これは、ドラゴンソテーね。見事な焼き加減と香り……」


 彼女はフォークを手に取り、イリスの皿から慎重に一切れを口に運んだ。

 次の瞬間、彼女の瞳が驚きで大きく見開かれた。


「こんな……こんなドラゴンソテー、今まで一度も味わったことがないわ……!」


 驚きと喜びが混ざった表情で、レイラは俺を見つめた。

 彼女の反応に、俺は少し照れくさくなりながらも自己紹介をした。


「俺はリク・アマギ。異世界から来た、ただの料理人です」


 レイラは微笑みながら、再びドラゴンソテーに視線を戻した。


「ただの料理人……? いいえ、あなたはセレスティアルに選ばれた料理人。この料理がそれを証明してくれている。食べただけで体が温まり、力が満ちてくる。いい食材を使ったからと言ってここまではならないわ」


 彼女の称賛に、俺は少し恐縮しながらも頷いた。

 しかしその瞬間、レイラの表情が真剣なものに変わった。


「リクさん、やはりあなたの料理の力が、私たちの国を、世界を救う希望かもしれない」


「イリスさんも言っていましたが、それはどういうことなんでしょうか?」


 レイラは深い呼吸をしてから、ゆっくりと話し始めた。


「私たちの王国は今、料理皇帝ラズフォード・アルカディアという男によって脅かされています。彼は『バトルキッチン』という料理対決で、国を支配しようとしているのよ」


「バトルキッチン……⁉⁉⁉」


 その言葉に、俺は眉をひそめた。

 魔法まではまだかわる。

「バトルキッチン」ってなんだ?

 料理対決で国を支配するってギャグ漫画か?

 しばらく混乱していたが、イリスはそこに補足してくれた。


「バトルキッチンは、この世界の魔術的な意味を持つ料理対決よ。料理人同士が自らの技と知識を駆使して勝負し、負けた者は命を失うこともある……。ラズフォードはそのバトルキッチンで数多くの料理人から料理人生命を奪い、今はこの王国に目をつけているの」


 俺は信じられない思いで、彼女たちの話を聞いた。

 料理対決で命をかけるなんて、そんな世界が本当にあるのか?

 けれども、異世界に来たばかりの俺が元の世界の常識に囚われること自体、ナンセンスなのかもしれない。


「俺の料理が……そのバトルキッチンで役立つってことですか?」


 レイラは深く頷いた。


「そうよ、リク。あなたの料理には特別な力がある。その力で、ラズフォードに立ち向かうことができる!」


「立ち向かう……俺が……」


 自分が料理をしていればなんとなくこの世界は救われるのだろう、程度にしか理解していなかった俺には、命を懸けて料理対決をし、料理皇帝とやらを倒し、王国を救うなんて壮大すぎる目標に現実感を持てなかった。

 しかし、レイラの瞳には揺るぎない決意が宿っていた。


「お願い、リクさん。あなたの力が必要なの」


 ――――――――――


 その後、ふたりに謁見の間へ案内された。

 堂々たる姿の王と王妃があった。

 広間の両側には数人の騎士が控え、厳しい表情で俺たちを見つめていた。


「お主が伝説の包丁セレスティアルに認められ、召喚された料理人か」


 国王は威厳に満ちた声でそう言いながら、立ち上がった。

 俺は思わず頭を下げたが、どう振る舞うべきか分からなかった。


「はい……リク・アマギです」


 国王はしばらく俺を観察するように見つめ、そして口を開いた。


「リクよ。我が国は今、料理皇帝ラズフォード・アルカディアによって征服の危機に瀕している。彼はバトルキッチンで、我が国を支配しようとしているのだ」


 王妃も静かに頷いた。


「彼は無慈悲な男です。料理で人を屈服させ、従わせる。それを拒めば……」


 ……命を奪われるのか。


 俺はイリスの言葉を思い出し、息を飲んだ。

 料理が命を左右する世界。

 俺が今まで生きてきた世界とは全く違う、命懸けの料理対決が存在する場所だった。


「お願いです、リク・アマギさん。セレスティアルで……いえ、あなたの料理の力で、どうかこの王国を救ってください」


 王妃が深々と頭を下げる。

 それを見た俺は、心の中で決意が固まるのを感じた。

 ここで逃げるわけにはいかない。

 とても口には出せないが、自分の料理の腕が試せるのではないかと期待もあった。

 俺には料理しかできない。

 でも、その料理でこの国を救えるかもしれないなら、挑戦してもいい。


「……分かりました。俺にできることなら、やってみせます」


 国王と王妃、そしてレイラ王女の表情が一瞬で柔らかくなった。

 その時、俺の異世界での旅が、真の意味で始まったのだ。


「ありがとう、リクさん。私たちにはあなたが必要よ」


 レイラの感謝の言葉が心に響き、俺は拳を握りしめた。

 この異世界で、俺の料理がどれだけの力を持つのか。

 それを証明するためにも、俺は戦う覚悟を決めた。


 ――――――――――


「ところでイリスさん、俺はこの世界を救ったら元の世界に帰れるんですよね⁉」

「え? ええ、大丈夫よ。大丈夫なはず……」


 召喚した当人であるイリスの態度があやしい……。


「大丈夫……なんだよな?」

「もちろんよ、だって、セレスティアルだってそっちの世界に送られてるわけだし。ちゃんとあなたも帰せるはずよ!」


 大丈夫か、この魔法使いのお姉さん。

 心配だ……。

読んでいただきありがとうございます!


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今後ともよろしくお願いします。

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