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えっ乙女ゲーム?ギャルゲーじゃないんですか?

 私は目を覚ましたらお姫様ベットで寝ていた。とてもふわふわで、暖かい。まるでマシュマロのようだ。

 ……にしても、ここはどこ? 私は確か……アレだ。そう、学校に向かう途中で……。

 とにかく現状確認をする為に体を起こすと急に声をかけられた。


「ラーファ様、目が覚めたのですね」

「誰、この美少年……」

「え?」


 俺の発言で目が点になっているようだけど、目の前に見知らぬ美少年居たら驚く。普通。

 俺が目を覚ました途端に声をかけてきたのは綺麗で長い黒髪を一つに結い、紅の瞳をした人間離れした美貌を持つ少年だった。

 てか本当にここど……こ?

 ……いや、思い出した。私の家じゃないの。けど本当に学校に向かう途中だったような、でも私はまだ学園行く歳じゃないし……? あれ、学園? 私が通っているのはただの公立高校だったよね? 私はただの女子高生なはず……?

 第一に私の名前は、ラーファじゃ、ない、ような……。


「ラーファ様。お怪我はありませんか? お会いした瞬間急に倒れたので驚きました」


 先程からそうだが幼い顔立ちだけど丁寧な口調だ。きっと育ちが良いんだろう。服も良さそうなのを着ている。

 ラーファ。そう呼ばれて違和感がないことに違和感を感じる。だって私の名前はラーファであってラーファではない。変な感じ、まるで私の中に二人の人間がいるような。でもその違和感はまだ拭うことができずモヤモヤしてしまう……でも、ラーファってなんだか他にどこかで聞いた事ある。それも最近のことだ。


 あっ…………。


 そのとき、私はあることに気付いてしまった。いや、思い出した。そしてその瞬間に顔を青ざめてしまう。

 念の為と確認するために声を振り絞りに絞ってこの美少年にそのことを聞いてみることにした。

 

「あの、おかしなことを聞きますが私ってもしかしてラーファ・レリビア……?」

「そうですね。……もしかして突然倒れたときの打ちどころが悪かった。でしょうか?」


 えっ……マジの方? 今無茶苦茶頬をペシペシしてるけど痛いだけだし。ペシペシするから変な目で見られるし。

 もしかしてネット小説でよく見るアレに今現在進行形でなってるの? 嘘だろ……?

 そういや登校中に植木鉢が頭上に落ちてきて……そこから記憶がない。

 つまり私、死んだんだ。

 ストンと落ちてきたその事実に不思議とショックは受けなかった。勿論、未練だったりはあるけれど。案外ああ、死んだのか。という感想しか出てこないものだ。

 そして、こっちの世界で不意にぶっ倒れたとき、その記憶が蘇ったということか。

 それよりもラーファ・レリビアという名前で確信した。この世界は友人から借りた……というより押し付けられたあの乙女ゲームの世界なのだろうという確信がついてしまった。

 そしてラーファというのはこの世界のヒロイン! ……ではなく悪役令嬢。いや極悪令嬢のことである!

 頭を抱え、うんうんと考え込んでいると不安げな表情をしたままの美少年が椅子から立ち上がった。


「具合もよろしくなさそうなのでまた後日ご挨拶来ます」

「あ、挨拶? なんの……でしょうか?」


 あぶねえ! 一瞬素が入りかけた! ラーファは極悪でも令嬢なんだから令嬢らしく振る舞わないと……!

 美少年は俺の発言に再びキョトンとした後、色気のある微笑みを浮かべてこう言った。


「婚約者になった挨拶です。それではお大事にしてください」

「えっ、えっ、え?」


 じゃあコイツはあれか? 攻略対象の第一王子兼魔王様の彼? 微笑みから漂うこの色気はこの歳からなのか……えぇ、怖ぁ。

 って違う! 知らないうちに話がポンポンと進んでるじゃないか!


「それでは失礼します」


 彼はそう言って戸惑ったままの私の部屋から出ていってしまった。

 扉がバタンと閉められた空間は彼を引き止めようとした俺の手だけが空中を彷徨っている。


「……えーと、アイリ。貴方は仕事に戻って大丈夫よ。迷惑かけたわよね」


 そうラーファのメイドであるアイリに言った。

 ……とりあえず今は一人になって話をまとめないと、馬鹿だから覚えてる限りのことは忘れる前に何かに書かないと死ぬ!


「……本当に大丈夫ですかラーファ様。何故か口調も大分大人っぽくなりましたが……」

「え? あっ、あー…………ほら! 私ももう婚約者できた歳ですし! もう少し大人にならなければなりませんし!」


 腕をぶんぶん振り回して渋い顔をしているアイリをなんとか説得しようと言い訳を絞り出す。

 そりゃあ精神は十七歳だからね! 七歳よりは大人っぽいでしょうね! なんとか背伸びをしてるおませさんだとでも思ってくれ!

 焦りつつもほらほら出てってと言い、アイリを追い出した後、私は現状を整理する為に何か書くものを探した。

 

「えーっと……これ! これでいいな!」


 私は机の上にあった手帳に書き込むことにした。


「……それにしても令嬢ってことはお嬢様口調にしなきゃなんないのか、めんどくさ……」


 ポロッと出てしまったがこれは紛れもない本音だ。自分のお嬢様語が恥ずかしすぎて精神崩壊しそうだしボロがさっきみたいに絶対何処かで出る。

 前世は喧嘩っ早い口荒い女だった。口を開けば暴言か二次元の女の子のことぐらいでろくな事を言わない。

 令嬢って何を話せばいいのやら。世界情勢? 男の話?

 ……いやそんなこと考えてる場合じゃない。さっさとこれにこの世界の情報を書き留めないと。


 

 『The only very sweet love』

 それがアホで乙女ゲーとイケメン大好きな友人に押し付けられた乙女ゲームのタイトルだ。

 私はギャルゲー専門で生きてる人間というのにも関わらず、友人は私に「これやってみてよ面白いから」ってなんてほざいた上、クリアするまではギャルゲー没収にしてきやがったので仕方なく隅々までやってやったのが記憶に新しい。丁度明日の前日に終わらせたばかりだ。

 女好きの私は案の定、好きになったキャラクターはヒロインだ。見た目性格何もかも滅茶苦茶好み。そりゃあ攻略対象は彼女に落ちまくります。おいイケメン、そこ代われ。なんて考えているうちにあっさりと攻略を終えた。

 ギャルゲーをやっているせいか乙女ゲーが甘く感じてしまったというのもある。最初のうちは女の子が男に対する対応が塩対応の作品が多いのだ。それに打って変わって男が女の子に対する反応が最初から甘かったりする。そりゃあ塩対応してくるキャラもいたがすぐに落ちてくれた。もしかしたらヒロインちゃんは魔性の女なのかもしれないとまで考えさせられるほどには乙女ゲームは甘かった。

 このゲームは唯一のとても甘い恋を貴族様としましょう! というのがパッケージに書いてあり、確かにストーリー的にもとても甘々だった。

 乙女ゲームといえばこれ! と言われる程に世界的に有名な乙女ゲームで、王道を詰め込んだ作品となっている。どれくらい有名かというと乙女ゲーに興味が無い私でさえ友人に押し付けられる前からタイトルぐらいは知っていた程だ。

 ちなみに乙女ゲームランキングでは常に一位を維持しており二作目、三作目とシリーズ化もされているらしい。

 貴族王族が集まる学園、オーリュ学園という魔法学園を舞台にしている。そんなオーリュ学園だが一部の人間は特待生制度で通っている庶民がおり、同じく特待生としてオーリュ学園に通うこととなったヒロインは剣技、魔法、そして恋を貴族達と学んでいく……。というのがこのゲームの設定でここから本題。

 俺が転生したのがヒロインの場合なら悪役令嬢の三人を落としまくったが、悪役令嬢になったのなら話は別腹。  

 悪役令嬢は何かやらかすと危ない目に遭う可能性が上がるとこのゲームをしてわかった。

 そして選べるならラーファにはなりたくなかったと思う程にラーファは破滅フラグしかない。

 何故なら先程の美少年……ヴィネ・シルファーという名前の第一王子が理由の一つ。

 彼は王国の第一王子であり魔王でもある。というのも魔王の魔力を産まれた時に授かってしまったというだけの不運な子だ。

 この世界の魔力は炎、水、氷、風、雷そして珍しいと言われている光の六つに分かれており貴族や王族は必ず与えられ、稀に庶民にも授かるといわれているのだが、魔王であるヴィネはその全てを行使することが出来るチートキャラ。

 生まれてからずっと非難の目を向けられて、腫れ物扱いを受けていた。そんな環境で育ってしまった彼は私欲がなくなり、意志も手放してしまった。そのせいでお前は魔王の子だから王の座を第二王子に譲れと言われても何の抵抗もなく譲り、それに対して何にも思わない、ほぼ無感情の持ち主になったのだ。

 魔王の力を恐れて周りは極力彼に近づかないようにして、一人の側近に世話を全て任せている。両親、兄弟との関係も薄く、彼は期待をしなかった。全てを諦めていた。そんな彼にとって唯一の拠り所は彼の側近でありゲームの攻略対象の一人、サウス・ブルシュだけだった。

 ヴィネは唯一心を許している彼にだけは子供っぽいところがあって、このことから作中ではサウスとの絡みが多く、一部のファンからは二人を題材にしたボーイズラブの二次創作が流行っているらしい。ちょっと読んだけど面白かった。

 ヒロインに対してはただの庶民としか思っていなかったが、周りと違って恐れることもなく愛想を持って接してくるヒロインに惹かれていく。

 そんな彼の厄介な点はラーファこと私の婚約者ということだ。作中の関係値は自分にベタベタしてくるラーファに対して本当に「婚約者」というカテゴリーの中でしか見ていないというぐらいの好感度。その好感度には問題はないのだ。問題は彼が魔王であるということ。

 ヒロインに恋をする決め手となる婚約者でさえ、兄弟でさえもが恐れた闇堕ち魔王化イベント。大事な存在であるサウスが魔王の臣下である人間に人質として捕えられてしまい、ヴィネは全てを失い真の魔王となる契約を結んでしまう。

 凶悪な魔王と化してしまったヴィネは誰にも止めることができず、婚約者、兄弟でさえもが彼に恐怖を、敵対心を抱いてしまう。それを感じ取ってしまったヴィネはあまりの絶望に婚約者であるラーファを殺めてしまう。そのことにさえもショックを受けて自暴自棄になる。

 そう、無感情な彼にも親しい間柄である人物への愛着はあったのだった。魔王の力は負のエネルギーによって促進するせいもあって、国中がボロボロになってしまう。光の力を持っている第三王子でさえも彼の力には及ばず、絶望的な状況に陥る。

 バッドエンドではヒロインが彼を止めることができず、国だけじゃ収まらずに世界が滅んでしまう。

 ハッピーエンドではヒロインが伝説の光の力を手にし、彼の説得に成功する。「世界が貴方を愛さないのなら、私に貴方を愛させてください! 私に、私だけに貴方を愛する権利をください!」と言って闇の力を完全に飛ばし去る。

 そのシーンのヒロインはクッッッソイケメンだ。ヴィネも惚れたし私も惚れた。基本的に私は美少女を抱きたい方の女だがヒロインになら抱かれてもいい。

 そして闇の力のせいで気が動転していたヴィネも、そして滅ぼされていた国も元通りになっていく。そして二人は真実の愛を告げ、口付けをする。「世界に愛されない私達は愛し合う」という言葉を告げ、エンドロール。

 皆さん聞いてください……ラーファ、死んじゃってるんですよ。

 全体的に見るとすっげえ良い話だったんですけど、死ぬんです。私。

 まあそれぐらいの仕打ちは受けて当然だろっていう行動を起こしてたから死亡フラグを回収しただけでもあるんですけれどね。

 極悪令嬢ラーファはひょんなとこからヴィネと仲良くなるヒロインに苛立ち、軽い陰口から始まり、ストーリーが進むたび、徐々にいじめがエスカレートさせる。ルートによっては嫉妬に狂ったラーファがヒロインを殺そうとする場面も描かれる。勿論そのときに攻略対象が助けに来て、ラーファは国外追放または死刑となる。簡単に言うととんでもない女だ。可愛い可愛いヒロインちゃんをいじめるなんて本当にとんでもない……でも顔はいいんだよなぁ。そう思って鏡を見る。

 サイドテールの銀髪に黒い瞳をして椅子に座っている鏡越しの幼い美少女、ラーファ・レリビアは名高い公爵令嬢。取り巻きを作りつつ自分よりも下の人間をよく見下していて平民なんてもってのほかというようなやつだが、内心取り巻きのことも見下しているどうしようもない女。

 性格は最悪だが絶世の美女であり、炎の魔力を自由自在に操ることができ、筆記試験もトップスリー常連、淑女としての振る舞いも完璧、カースト上位の家系といった具合のハイスペックさを持ち合わせているのだ。性格はともかくこいつには勝てねえと思わされたことが何度もある。ちなみに乙女ゲーム界の悪役令嬢の手本となった人物とまで言われているらしい。

 その上怖いのは先程もポロッと話に出したがヴィネルートだけが死亡フラグというわけではないところ。

 今日はヴィネのことしかあまり思い出せそうにないからここで一度メモを取るのを終わりにするが、後に書き足さねばならない。

 まあとにかくゲーム開始はラーファが学園で三年生になったときだ。そのときにはフラグ回避をするべく奮闘しなきゃならないのだろう……。


「おっしゃやるぞ! フラグなんぞへし折ってやる!」


 拳をグッと天に掲げ、神にそう宣言する。

 見ておけ、絶対に私兼ラーファ・レリビアを死なせないからな!

 ちなみにその後、私の大声を聴いた父と母と執事、メイドは俺が頭がおかしくなったということで会議が起きたらしい。失礼な。

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