攻略難易度が高いですわ 4
それにしても、スチルが手に入るイベント発生場所に近いとはいっても、ランベルト様は、どうしてこんなにタイミングよく駆けつけてくださったのかしら?
「あの……。ランベルト様」
「う……。なんだろうか」
さきほどまで、私のことを優しく撫でながら見つめていたランベルト様に露骨に視線をそらされてしまいましたわ?
「えっと、あの……」
「と、とりあえず、護衛も無事だったようだ。屋敷に戻った方がいいだろう」
「……はい。助けていただいて、ありがとうございました。ランベルト様」
返事の代わりに、返ってきたのは、切なさを感じるため息。
「……あの、私」
あきれられてしまったのかしら。
そうよね。王太子の婚約者として教育を受けてきた私は、王家の秘密を知りすぎているし、王妃や神殿にとって邪魔な存在だもの……。
危機管理もできない、ランベルト様を巻き込んでしまう。
「あ……。では、私はこれで。本日のお礼は、必ずいたしますわ」
あっ、どうしたらいいのかしら。
泣きそうだわ。
怖い思いをしたからではないの。
ただ、ランベルト様に迷惑をかけてしまったから……。
「はぁ……」
再び聞こえてきた、大きなため息。
少しだけ長い頭頂部の毛並みをぐしゃりと乱したランベルト様が、私の手をそっと掴んだ。
「ランベルト様?」
「これを身につけているように」
「……?」
くすぐったいほどなめらかでモフモフしたランベルト様の感触に思わず目を細めた直後、シャラリと冷たい感触と涼やかな音がした。
「危険が去るまで、もし何かがあったらわかるように。そこで平伏しているルティーナ嬢の護衛は、間違いなく一流だ。そんな彼を簡単に無力化してルティーナ嬢をさらうなんて、相手も本気でかかってきている。……危険だ」
……手首を顔の高さまで上げて、涼やかな音の正体を確認する。
それは、白銀の華奢なチェーンに空色の石がついたブレスレットだった。
「ランベルト様の瞳の色です……」
「……俺の瞳の色などで申し訳ないが、ルティーナ嬢の安全のため」
「ら、ランベルト様のイメージカラーのブレスレット!!」
実は、この世界に来る前に、ランベルト様の瞳をイメージしたアクセサリーを手作りしていた私。
でも、まさか推し本人からいただけるとは。
「公式様……」
「は? こうしき、とは」
「あっ、えっ。うれしいです。一生大切に致します。……あのっ、代わりに何を差し出せばいいでしょうか? 領地の半分でしょうか。個人資産をすべて」
「え……、冗談にしても、規模が大きすぎる。悪い人間にだまされてしまいそうだな……。それに、危険があったときだけとはいえ、俺に行動がわかってしまうものなのに……。気持ち悪くないのか?」
「――――え? ランベルト様と繋がっている……。え、なにそれ。何のご褒美でしょうか」
そのあと訪れた沈黙。
あまりの羞恥に、私もランベルト様を見ることができなくなる。
しまった、確実におかしな女だと思われたわ。
そう思いながらも、手首についたブレスレットは、絶対に一生外さないと、心に決めたのだった。
ランベルト様は、そのあと護衛のカールに手を差し伸べて、立ち上がらせてあげていた。
本当に私の推しは、神なのだろうか?
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