表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/52

推しへの愛を形にしますわ 3


 結局のところ、そこから先、ランベルト様と私は、なぜかゼロ距離で、スチルは泣く泣く諦めて、二人一緒の肖像画を描いてもらうことになった。


「でも、特別な服装をお召しになったランベルト様のスチルが……」


 お揃いの衣装で、仲良く並んで肖像画を描いてもらうことには、とても心浮き立つけれど私は実物のスチルが欲しいのだ。


「ほら、ルティーナ嬢?」

「へっ!?」


 間の抜けた声を出した私の唇に当てられた、ヒンヤリした鼻先。

 途端に私の体から、無意識にあふれてしまったのは、黒いダイヤモンドのように輝く魔力の光だ。


 その七色にキラキラ輝く黒い魔力が、ランベルト様を取り囲むと、美しい白銀の狼の顔が、これもまた美しすぎる美貌の男性へと変わる。

 感情の高ぶりと愛しい気持ちがあふれるとともに、無意識に使ってしまった魔法は、私とランベルト様の姿を変えてしまった。


「……おや、この姿になるなんて予想外だが」

「……モフモフが」


 バサリと私を包みこむように音を立てたランベルト様のマント。

 髪の毛や瞳の色だけでなく、背も、胸も、手のひらすら、元の世界の姿形に変わってしまった私は、ランベルト様にスッポリ包み込まれるように隠された。


「いつものことだが、なぜ残念そうなんだ」

「どんな姿でも好きですわ」

「……そうだな。誤魔化された気もするが、俺もどんな君のことも好きだ」


 瞳の色は変わらないまま、少しだけ呆れたように微笑んだランベルト様は、この世のものとは思えないくらい麗しい。

 もしかすると、結局見ることが出来なかったエンディングのランベルト様は、こんなふうに……。


(うぅ、それにしても距離が近いですわ。胸が苦しいですわ。それにやっぱり、こんなふうに意地悪げには笑わなかったに違いないです)


 チラリと見上げた私の頬は、きっと真っ赤に染まっているに違いない。


「だが、魔力が枯渇して眠り込まれても困る」


 私の魔力を制御しながら、器用にも落ちてきた口づけに、吹雪のように私たちを包み込んだランベルト様の魔力。

 姿を元に戻したけれど、ますます染まったであろう私の頬。

 姿が元に戻ると同時に、マントはどけられたけれど、こんな顔のまま、肖像画が描かれてしまうなんて、やっぱり納得いかない。


「ああ、納得いかないな」

「えっ?」


 それなのに、なぜか不満げな声を漏らしたのは、ランベルト様のほうだった。


「何が納得いかないのですか?」

「……君のこんな顔を見るのが、俺だけでないこと」

「えっ」

「……でも良いか、ルティーナ嬢だけの絵を描いてもらい、執務室の奥に飾って、俺一人が愛でるのも悪くない」

「ええぇ」


 困惑している私たちを凝視しながら、なぜかものすごい勢いで、絵を描き続ける若手画家。


 そう、この世界では無名の、少し変わった絵を描く画家が、姿を変える私たちを描いた連作。

 それが、ビルヘルム王国中で、話題を攫うまであと少し。


 ***


(そして……。うふふ)


 後日、話題になった連作とは別に、私の元に届いた一枚の絵画。

 若手画家の彼のことは、資金も人脈も、権力もすべてを惜しみなく使って応援していこうと心に決める。


 立派な額縁に入れた、夢にまで見たモフモフが素晴らしいランベルト様の絵画。

 わかっている画家は、秘密裏に私宛にランベルト様の絵画を届けてくれたのだ。


(うふふ、シークレットスチル!!)


 ランベルト様が、私を呼んでいる声が聞こえる。

 早くこのスチルをどこかに隠さなければ。


 そのあと、ランベルト様に見つかってしまったけれど、スチルは背中に隠して誤魔化して、何とかその場を乗り切り、誰にも見られないように、私室の奥にそっと飾ったのは言うまでもない。



最後までご覧いただきありがとうございます。


*宣伝*

このたび、こちらの『モフモフ辺境伯』がミーティアノベルスより電子書籍配信の運びとなりました。

応援いただきありがとうございます。


編集部の皆様と本気の加筆修正に、婚約後の隠しエピソードを収録しております。


各電子書籍ストアにて、瀬々川なこ様の美麗な表紙イラストとともに、本日より配信開始しておりますので、こちらもお手にとっていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ルティーナはシークレットスチルを手に入れた*\(^o^)/* ランベルト様も執務室の奥に飾っていそう〜 2人の幸せSSありがとうございます♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ