推しへの愛はすべてに勝りますわ 2
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そして次の日、私を待っていたのは、想像を絶する大歓迎だった。
「横断幕に、うちわ……」
しかも、布やうちわは黒一色でまとめられ、そこに私の瞳の色である金色で、文字が書かれている。
「くっ、推しカラーで攻めてくるとは。……やりますわね」
「そこなのか?」
少しあきれたような、ランベルト様の言葉。
たしかに、黒に金色、ときどき紫で占められた空間は、まるで黒魔術の集会のようだ。
「あっ、あそこにいる方は、ランベルト様カラーの横断幕ですわ!?」
毒々しさすら覚えるダークネスなカラーの中、爽やかな風が吹いたような白銀とアイスブルー。
あの方とは、ぜひ夜を徹してお話がしたいものだと、密かにうなずく。
本当に、白銀とアイスブルーは、モフモフで周囲に癒やしを与えるランベルト様にぴったりの色合いだ。
「うふふ……」
「カールは、いったいどんな説明を領民たちにしたんだ?」
(なるほど、カールの仕業でしたのね?)
おそらくカールは、私が記憶を取り戻してからランベルト様推しについて熱く語っていた内容を忠実に再現したのだろう。
それにしても、うちわの周囲を彩る金色のモールまであるなんて、ゲームの影響なのかしら?
「ランベルト様?」
「…………本当に、いいのか。俺とともに歩む限り、平坦な道などないのに」
「…………たぶん、ランベルト様と歩む、急勾配の人生。それはもう、登山デートと言っても差し支えないですわ」
「山でデートとは、野営でもする気か?」
「二人きりなら、それもいいですわ」
「っ、!?」
なぜか、ギシリと固まって少し私から距離をとったランベルト様。
たしかに、最前線で戦う日々を送ってきたランベルト様にとって、野営なんていい思い出ではないのかもしれない。
「……普通のデートにしましょうか」
「……いや、ぜひ君に見せたい星空がある」
「あら、素敵ですわね」
「そうだな、途中の魔獣は俺が何とかしよう」
思ったよりも、本格的な野営であることに、目を白黒させつつも、ランベルト様と一緒に過ごせるのなら、それすら悪くないと思ってしまう私は、本当に重症だ。
そのまま、エスコートされるように手を引かれ、真っ黒と金色に彩られた、領民たちに二人で手を振る。
カールの努力のおかげなのだろうか。
「すごい歓声ですわ」
「ああ、領民たちの一部は、隣国に故郷を持ち、ほとんどが隣国の血を継いでいる。黒い髪と瞳の女神を待ち望んでいたからな……。それに、君の護衛、カールは、何というか……すごいな」
もう一度手を振れば、少し過剰なほどの歓声が、領民たちから湧き上がった。
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