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【電子書籍配信中】悪役令嬢なので可憐に退場しますが、モフモフ辺境伯だけはおゆずりいたしませんわ  作者: 氷雨そら


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38/52

波乱の中でも一番はモフモフ辺境伯ですわ 6


 周囲は、黒い宝石のように、七色に輝きながら煌めく光に満たされる。

 それは、終わりのようで、始まりのようで、美しくて恐ろしい、非現実的な光景だった。


(間違いなく、私が引き起こしてしまったようですわ?)


 私の腰にまわされていた腕に力が入る。

 視界の端に映る黒髪。


 女神、精霊、そんな単語がざわめきの中に聞こえてくる。

 今、間違いなく周囲の視線は、ランベルト様ではなく、私に集中している。


「ルティーナ嬢」

「約束しましたもの。わざとではありませんわ」

「わかっている。……俺に任せてほしい。だが、一度だけこの姿で君と」


 降ってきた口づけは、以前と違う。


(モフモフしたお姿が、大好きだけれど、口づけはこの姿のほうが、近くて、深くて、甘いですわ)


 人前と言うことも忘れて、ランベルト様の上衣をすがるようにつかむ。

 柔らかい感触は、ほんの一瞬。

 次の瞬間には、モフモフした感触と、ひんやりした鼻先が、私の唇に当たった。


「君の姿、知られてしまったな」

「ランベルト様?」

「……その黒い美しい色を、神殿の関係者にも、領民にも、そしてサーシェス辺境伯領の有力者たちにも知られてしまった」


 唇が離れ、目の前にいるのは、もう見慣れた大好きな白銀の毛並み。

 最近表情がわかるようになった、愛しい狼。


 そして、私の視界の端に映る髪の毛も、今となっては見慣れた紫色へと戻っている。


「……だが、君だけは、誰にも譲れない」

「ランベルト様」


 それだけを言うと、おそらく私の発動した魔法を打ち消すために、残りの魔力を使い切ったランベルト様は、私に倒れ込んできた。


「ランベルト様!!」

「……この場は、俺にお任せいただけますか」


 支えきれない体重が、不意に軽くなる。

 顔を上げれば、目の前には、頼りになる護衛騎士がいた。


「っ、カール。…………ええ、この場は、あなたに任せるわ」

「ありがたき幸せ」


 カールの表情には、余裕がある。

 この状況を予想していたのではないかと思ってしまうほどに。


(そうですわね。以前、広場で魔法を発動しかけたときに、この姿をカールも見ていますものね)


 軽々とランベルト様を肩に担ぎ上げ、馬車に押し込んだカールは、そのまま私に手を差し出して、同じく馬車に乗り込ませると、扉を閉じて御者に出発の指示を出す。


 走り出した馬車。

 ランベルト様の呼吸は、規則正しい。

 だから、きっと大丈夫。


「私だって、ランベルト様だけは、誰にもおゆずりいたしませんわ」


 私も、魔力を使いすぎたのかもしれない。

 たった少し離れていただけで、恋い焦がれた、モフモフの柔らかさを感じながら、気がつけば私も深い眠りへと落ちていた。


最後まで、お付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです。

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