表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【電子書籍配信中】悪役令嬢なので可憐に退場しますが、モフモフ辺境伯だけはおゆずりいたしませんわ  作者: 氷雨そら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/52

推しと二人きりなんて無理ですわ 4


 大きな声は、私の姿を見つけてすぐに静まった。


「お嬢様!!」


 翡翠色の瞳をした大型犬が、飼い主を見つけて飛び込んでくる幻影を見た。

 そのままその茶色い影は、すごい勢いで私の元に走り寄って、目の前にひざまずく。


「お嬢様……。何も言わずに、置いていくなんて、俺はそんなにも頼りにはならない護衛でしたか?」

「うぐ…………」

「たしかに、前回は不覚をとりましたが、以後は身命をなげうってでも、お嬢様をお守りいたします」

「あの……。カールのことを頼りにしていないわけではないのですわ。ただ、なんとしてもランベルト様について行きたくて……」


 翡翠色の瞳が、まっすぐに私のことを見つめる。

 やっぱり、忠実な大型犬みたいだ。私の護衛騎士は……。


「そんなこと、たった一言命じていただければ、叶えて差し上げたでしょう」

「え、そんなことしたら、ウィリアス公爵家に反することになるわ……」

「俺は、お嬢様の護衛騎士です。剣を捧げた相手は、公爵家ではなく、ルティーナ・ウィリアスお嬢様ただお一人です」


 嘘をついているように見えないから、カールは本気で言っているのだろう。

 そういえば、ルティーナとしての記憶の中で、たしかに幼いカールから剣と騎士の誓いを捧げられた。


「…………申し訳なかったわ。カールがそんな気持ちでいてくれたなんて」

「俺は、お嬢様の行くところであれば、辺境であろうと地の果てであろうとお供いたします」

「……カール」

「感動の再会は素晴らしいが、そろそろいいかな?」


 ヒョイッと抱き上げられる。

 背中と首をそらして見上げれば、口元はなんとなく微笑んだように見えるけれど、目はまったく笑っていないランベルト様がいた。


 すぐに下ろしてもらえたけれど、なんとなく空色の目は、曇らせてはいけない、そんな気がする。


「ランベルト様」

「――――サーシェス辺境伯。どうか、俺もお連れください。必ずやお役に立ちます」

「実力はわかっている。魔法が封じられた状況下では、確実に俺よりも強いことも……」

「は! 命をかけてお仕えいたします」

「…………カール殿は、これからもルティーナ嬢に仕えていくのか?」

「もちろんです」

「…………この先、何があろうと、ルティーナ嬢だけを優先するのか」

「問われるまでもなく、そのつもりです」


 迷うことなく答えたカールに、申し訳ない気持ちがわき上がる。

 だって、カールが剣を捧げたルティーナだと、今の私は言い切れるかしら。


「……許すも許さないも、決めるのはルティーナ嬢だ」

「…………お嬢様」


 まっすぐに私を見上げた翡翠色の瞳。

 子どもの頃から、ずっとそばにいてくれた、私の護衛騎士。

 王妃と神殿を敵に回してしまった私の護衛騎士なんて、カールにとって得なことなんてないのに。


 一瞬迷ってしまった私に、剣が差し出される。


「…………カール」

「お嬢様は、お変わりになりました。そのことが、俺を護衛騎士としておく迷いになっているのなら、今、もう一度誓いを捧げましょう」

「…………私」

「今のお嬢様は、すべてを諦めていたときよりもいいと思います」


 護衛騎士としては、完全に言ってはならない言葉だろう。

 でも、私の背中を押してくれるには十分すぎる一言だ。


「……ありがとう」


 そっと、叩いた肩は、子どもの頃の記憶と違って、たくましかった。

最後までご覧いただきありがとうございます。『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるとうれしいです。

次回、ランベルト様視点のはず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ランベルト様最高でした。推せる!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ