推しと二人きりなんて無理ですわ 3
ごろりと横になって、ランベルト様が寝ているソファーを見つめる。
ドレスのまま寝転がるなんて、お行儀が悪いですわ……。
「――――ランベルト様」
ベッドから起き上がって、端っこに座る。
大きなベッドに対して、ソファーから長い足がはみ出てしまっているランベルト様。
(とても狭そうですわ?)
トンッと床に足を降ろして立ち上がる。
クローゼットを開けてみると、パジャマがきちんと用意されていた。
お揃いのパジャマ……。
ソファーの横にしゃがみこんで、顔をのぞき込む。
もちろん、まだ時間は早いから、眠ってなんていないランベルト様の空色の瞳。
その瞳が、どこか熱をたたえて私を見つめ返す。
「ランベルト様? 着替えて寝ないとお召し物がしわになってしまいますわ」
「…………そうだな」
「えっと、先にシャワーを浴びてきてはいかがですか?」
「…………無自覚か」
無自覚というのはよくわからない。
とりあえず、シャワーを浴びてスッキリして眠ればいいと思いますわ?
(そういえば、ランベルト様は、お供をつれずにいらしたのね……)
ランベルト様に害をなせる人間なんてそうそういないだろう。
けれど、ランベルト様は、サーシェス辺境伯だ。
護衛も連れずに、王都まで来たというのだろうか。
「お嬢様あああ!!」
遠くから、声が聞こえる。
そう、聞き慣れた元気いっぱいの声だ。
その声は、どんどん近づいてくる。
「…………」
「…………」
ソファーの上で起き上がったランベルト様と見つめ合う。
考えるまでもなく、この底抜けに明るく、けれど今日はどこか悲壮な響きを含んだその声を、私たちは知っている。
「えっと、ほかの方にご迷惑になりますので……」
「ああ。思ったよりも、ずいぶん早い合流だ。君の護衛騎士は優秀だな」
その言葉には、たしかに尊敬の響きが含まれていた。
「そうですね。私の護衛騎士は優秀なのです」
「……妬けるな」
「……迎えに行ってきますわ」
「ああ」
「でも、その前に」
ランベルト様の頬を両手ではさんで、勇気を出して軽い口づけをする。
「ルティーナ嬢……」
自分からは、口づけするのに、私からしたことがそんなにも意外だったのか、空色の目が大きく見開かれている。
「そういう意味では、ランベルト様しか、見えてないですわ!」
私は、クルリと背中を向けて、階下で聞こえる声の主を止めるため走り出した。
こんな大きな声を放置していたら、宿泊客の皆さまに多大なご迷惑をかけてしまいますわ!
「……やはり、無自覚のまま俺を翻弄する」
ランベルト様の小さなつぶやきは、もちろん私には聞こえなかった。
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