表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/52

好感度を上げてみせますわ 4


 抱きしめられていた腕が緩んで、そっとランベルト様の指先が唇をなぞる。

 くすぐったくて思わず目を閉じれば、フワフワした手のひらは、そのまま私の頬をなぞった。


「ランベルト様?」

「……行こうか。時間は有限だ」


 少しだけ強引に引かれた手。

 王都にはめったに来ていないはずのランベルト様は、迷うことなく街中を進んで路地裏の一件の店へと入る。


 少し怪しげなその店は、魔道具屋で、見たこともない道具や、古びた本が並ぶ棚の奥に、ガラスのショーケースがあった。


「すごい。こんなにたくさんの魔石が並んでいるの、初めて見ましたわ」

「もともとはこの店のため王都に来る予定だった。ルティーナ嬢から、あの手紙を受け取ったから、少し早めに」

「そうなんですか……」

「この店は、認められた者しか、入れないが、ルティーナ嬢は問題ないようだな」

「…………ん?」


 その店を私は知っている。

 日替わりでものすごくレアな魔道具屋や魔石が手に入る、条件を満たさないと入ることができないお店。


「おや、新しい客か」


 振り返った先には、赤銅色の瞳をした男性が一人。


「ふーん。噂の公爵家令嬢か。聞いていた印象と違う。噂は当てにならないな?」


 不思議な雰囲気をしたその人は、カウンターから出てくると、私の顎に手を添えて上を向かせた。

 その赤銅色の瞳に覗かれると、まるで心の奥底まで見られている、そんななんとも言えない気分になる。


「ひゃっ!?」


 ぼんやりとしていた私は、後から引き寄せられて、ポフンッという背中への衝撃で我に返る。


「……おいおい。これだけでもうダメか」

「ルティーナ嬢に、触れないでくれるか?」

「…………はっ。お前は、一人で生きていくはずだったのにな。聖女にでも出会わない限り」


 聖女にでも出会わない限り?

 それってまるで……。

 胸の中をグルグルとしているのは、重くて痛くて冷たくて、あまりいい感情ではない。


「隣国の王家の血を色濃く受け継いだ辺境伯と、王家のスペア公爵家令嬢か。これはこれで、面白い未来が見られそうだ」

「要件を聞いてもらえるか?」


 聖女と出会わなければ、一人で生きていく。

 そもそも、ゲームのシナリオでは、私とランベルト様が出会うことはないはずだった。


「ああ。そのブレスレット、渡したのか」

「…………ああ」

「無くすなよ、お嬢さん」

「無くすはずないですわ? だって、一生外しませんもの」

「……そういうことを言うのはやめてくれ」

「ランベルト様?」

「そうだな。ルティーナ嬢が、それを外さない限り、すぐにそばに行けるから。…………一生外さないで?」

「…………!?!?!?」


 耳元に寄せられた鼻先、そして甘い甘い私をダメにする声。


 ランベルト様に後ろから抱きしめられたままで、クラクラしてきてしまったのですが、私はどうしたらいいのでしょうか?


 腕の中から抜け出そうと、そっと押し戻してみた私は、ますます強く抱きしめられた。

下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 大好きな溺愛の香りがしてきました!今後が楽しみです♪
[良い点] 可愛くしてランベルト様とデート♪ 薔薇と果実のジェラード美味しそう 逃がさないとばかりにきつく抱きしめられるのと、柔らかな毛並みの両方を堪能(//∇//)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ