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好感度を上げてみせますわ 1


 ***


 ランベルト様に助けていただいた翌日。

 私は、意を決してランベルト様の泊まっているゲストルームを訪れることにした。


「う、うう……。緊張しますわ」


 王立学園で、代表として挨拶するときも、大勢の前で弁論大会に参加しても、ダンスの見本を披露しても、緊張したことなんてなかったのに。


「迷惑かしら、やっぱりやめようかしら」


 ノックしかけた手が止まる。

 うつむいて、しばらく思案にくれたあと、深呼吸する。

 度胸、度胸ですわ!!


「は、入ったら、笑顔でごきげんよう、というの」

「そうか」

「それから、昨日のお礼をして」

「いや、気にすることはない」

「それから…………」

「まだあるのか?」

「えっ!?」


 顔を上げると、扉が薄く開けられて、目の前にランベルト様の顔があった。


「すまない。耳がいいもので、扉が閉まっていても聞こえてしまうんだ」

「えっ、あ。それは……」


 見る間に熱くなる頬。

 あわてて隠そうとしたけれど、そっと手首をつかまれて、隠させてもらえない。


「あの、昨日はありがとうございました」

「あれくらい、いくらでも」

「……あ、あれ? ランベルト様」

「なんだ?」

「扉が開いていなくても、聞こえるくらい耳がいいのですか?」

「ああ、この姿になってから、鼻と耳は常人と比べようがないほどいい……」


 その言葉に、浮かんだのは、先日ランベルト様のご様子がおかしかったときのことだ。


『ランベルト様は、強くて優しくて、本当に……』

『はあ。好き』


 ……ま、まさか! まさか、聞こえていた!?


「わ、わわわ私っ! 急用を思い出しましたわ!」

「…………そうか。ところで、明後日にはサーシェス辺境伯領に帰ろうと思う」

「…………え?」

「もともと、用事があったから、他の執務を早めて来たが、もう戻らなくては」

「そ、そんな」


 どうしよう。時間がないようですわ!


「また、そんな顔をして……」


 たしかに、今私はこの世の終わりのような気持ちでいる。

 婚約者になるどころか、お友だちにしか、なることができていない。


「……チャンスをいただけませんか?」

「チャンス? それは……」


 一瞬だけ、ゆらゆらとランベルト様の瞳が揺れた。それは、拒否を意味しているのだろうか。


「私は、ランベルト様の婚約者になりたいのです」

「……それは」

「っ……お友だちとしての私は、どうでしたか?」


 一瞬だけ、ランベルト様に、上から下まで見られた気がした。


「……かわいい」

「えっ?」

「ルティーナ嬢は、俺とは住む世界が違う。輝いていて、かわいらしいひとだ。……友人になれて光栄だった」


 友人だということは、認めるのですね?

 それなら私、まだあきらめません。

 好感度がマイナスにならないうちは、きっとチャンスがあるはずです。


「私、あきらめませんから!!」


 青春映画のようなひと言を告げて、私は明日のデートへのお誘いの手紙をランベルト様に押しつけて、部屋から逃げるように走り去ったのだった。

もちろん、お手紙は分厚いです。


最後まで、お付き合いいただきありがとうございます。

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