攻略難易度が高いですわ 5
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もちろん、本日起こった事件については、迅速にお父様に報告がなされた。
そして、現在私は、監禁されている。
「……厳重に鍵が掛けられているわ」
私室にかかった鍵は、二重か三重か……。
お父様は、一歩たりともこの部屋から私のことを出す気はないようだ。
たしかに、生活のすべてがこの部屋で完結する。
「――――だって、スチルよ……?」
けれど、結局の所、マリンにも、カールにも多大な迷惑を掛けたことは間違いない。
おとがめを受けないように、お父様にお願いしたけれど、やはりそういうわけにはいかないそうだ。
「……そうね。人に迷惑を掛けるのはいけないわ」
お行儀が悪いと思いながら、誰も見ていないのをよいことにベッドに仰向けになって、天蓋を眺める。
「これからは、今回のことで危険があるということを自覚して行動する必要があるわ」
そうやって、反省しているそばから、チラリと手首に光っているブレスレットが目に入ってしまい、ニヨニヨと口の端が緩んでしまう。
瞳の色のアクセサリーは、好感度が高くないともらえないのだ。
「ふふふ……」
安全が確保されるまで、というランベルト様のお言葉は、私には聞こえなかった。
聞こえなかったことにしよう……。
このブレスレットのお礼をお渡しして、なんとしてでも譲っていただくの……。
「ランベルト様は、強くて優しくて、本当に……」
……本当に素敵ですわ。
幼い頃から、王家に嫁ぐ身として、あらゆるものを我慢して過ごしてきたルティーナ。
もちろん、前世の記憶もあるけれど、それを除いても私は今……。
「はあ。好き」
その時、鍵を開く音がして、ものすごく控えめで恐る恐るとでもいうようなノックの音がした。
私は、のろのろと起き上がって、ドアノブをまわす。
「…………失礼、する」
「ら、ランベルト様?」
私は、ベッドに寝転んでしまったことを猛烈に悔やんだ。
整えられていた髪の毛は、もうグチャグチャになってしまっているに違いない。
それにしても、ランベルト様が挙動不審なのですが、一体何があったのでしょう。
「来ていただけて、うれしいですわ!」
「ああ、用事が終わったので寄らせてもらった。……ケガなどしていないか心配していたのだが、元気そうだな?」
「はい! すべて、ランベルト様に助けていただいたおかげです!」
「……そ、そうか」
そのまま、黙り込んでしまったランベルト様。
私は、首をかしげてそばに寄る。
ジリジリ……。
(あれっ? 近付いた分だけ離れていませんか?)
「あ、あの……」
「元気そうだな。そのブレスレットをつけていれば、必ず助けに駆けつける。ウィリアス公爵に、鍵を開けておいても安全だと伝えたら、泣いて感謝されたのだが……。人を信じすぎではないか? 君たち親子は」
「……お父様は、家ではこんな感じですが、対外的には問題ないかと」
「まあ、外との違いにだいぶ驚いたが、たしかにそうだな。それに、ルティーナ嬢も噂とはまったく違うのだな?」
ランベルト様が聞いていた噂は、氷のような令嬢とか、邪魔者は消すとか、聖女をいじめる悪女とかいう類いのものだろうか。
「孤高の花と聞いていたが、どちらかというと、ルティーナ嬢は可憐な花という表現の方が似合う気がするな……」
「えっ! 恐縮です」
ランベルト様と出会ってから、令嬢としてはあるまじき姿ばかり見せている気がしますわ?
きっと、フォローしてくださったのだろうランベルト様は、今日も我が公爵家に泊まっていってくださるそうだ。
引き留めてくださったお父様に、私は心から感謝した。
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