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目覚めたら負け犬令嬢⑧


 話せることは全部話して、どきどきしながら返事を待つ。


 しばらく沈黙が続いた後、正面からわたしの目を見つめていたディアスさんがふ、と肩の力を抜いた。同時に、太陽みたいな明るい笑みが浮かぶ。


 「――うん、嘘は言ってない。ちゃんと話してくれてありがとな」


 「、へ?」


 「わあああん良かったー!! でももう二度とやりたくないいいいい」


 「あーもう、わかったわかった。リラって意外とビビりよねえ」


 「だってー! アニキの特技が人間ウソ発見器なのは知ってるけど、実際使うの初めてだったじゃんか! せっかく助かったんだし仲良くなりたいもん、緊張しまくるの仕方なくない!?」


 「……ふえ?」


 思いがけない言葉と、なにやらわたし以上に緊張していたらしいリラの叫びで目が点になる。ぽかんとしていたら、まださっきの体勢のままだったショウさんがちゃんとフォローしてくれた。こっちも安心したのか、うんと柔らかい表情になっている。


 「ディアスが言うには、ああいった罪人の服は主に貴人が纏うそうですな。そうした場合は身分の高さゆえ極刑を免れて、代わりに国を追われることが多いと」


 だから、あの格好で国境にいた時点で、追放されたのは予測できていたらしい。関わり合いにならず放置する、という選択をしなかったのは、重い裁きが下ったあげくに瀕死の重傷(じゅうしょう)(だったらしい)を負うというわたしの不運っぷりに、メンバーの大多数が断固救助を主張したからだ。


 「生かして国を追われたのなら、生きて償うべしということであろう、と判断いたしました。ひとまずは怪我を癒し、本人の口から事情を確認して判断しようと」


 「うちのアニキ、もといディアスって目がよくてね。こいつに視てもらって、もし態度が悪かったり嘘つきまくったりするようだったら、改めて放り出せばいいやってことにしてたの」


 まあ杞憂だったけどね、と明るく言ってのけるフィアメッタである。なるほど、それでさっき安堵の叫びが上がってたのか。


 ガワと中身が違ってるという特殊な事情を省いたとはいえ、正直に話したことが吉と出たのは素直にうれしい。よかった、ちゃんと自分で言えて。


 全力でホッとして、思わず深々とため息をつく。そこへ、ひとしきりジタバタして落ち着いたらしきリラがひょこっ、と顔を出した。それこそヒロイン並みに可愛らしい顔立ちでにこーっと笑って、わたしの両手を取って上下に振ってくれる。うん、楽しそうだ。


 「じゃあさ、まずはケガ治さなきゃね! だいたい私が魔法でふさいだんだけど、完全に癒しちゃうとあんまり身体によくないんだって。ごめんね。

 ちなみに着替えとか包帯とかは女子コンビでやったから、心配しなくていいよ♪」


 「ふふ、はい。ありがとうございます」


 「いーっていーって。ていうか敬語はナシでいいよ、名前もどんどん呼んじゃって!」


 「はい、じゃなかった、うん。えっと、リラちゃん」


 「オッケーです! ちゃん付け可愛いっ」


 「はいはい、よかったわね。そんじゃ夕飯はとりあえずお粥かな」


 「あ、さっき薬草取ってきたぞ。刻んで入れてやってくれ、代謝がよくなって再生が早まるからな」


 「「はあーい」」


 そろって手を挙げていいお返事をする女子二人だ。さっきより断然明るくて楽しそうな雰囲気に、見ているこっちまでうれしくなった。


 いつの間にか立ち上がって、仲間たちを見守る位置に移動していたショウさんと、ふっと目が合った。すると、今までで一番優しく目を細めて、口の形で『良かったですな』と伝えてくれる。


 なんだかとても温かくてこそばゆい気分になって、わたしの口元がほえっと緩んだ。



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