森の迷宮(メイズ)にご用心②
そんなやり取りをしていると、前の方から呼ぶ声が聞こえた。
「おーい、入り口についたってさ。集まってくれー」
のほほんとしたディアスさんの声に小走りで集合する。まさにさっき見ていた崖の真下あたりに、垂れ下がったキヅタの葉っぱで隠れるみたいな洞窟がぽかっと開いているのがわかった。人ひとりがちょっと屈んで、ぎりぎり通れるくらいの高さと幅だ。
「フェリクス殿、ここで相違ないだろうか」
「はい、間違いありません。入ってしばらくは直線の通路で、日の光が届く範囲は問題なく進んでいけます。
が、扉を一つくぐればほぼ光源がありません。何かしらのご用意を」
「心得た。フィアメッタ、ティノ、頼めるか」
「はいはい、お任せ」
『おっけーでーす』
ティノくんが頭に飛び移った男子二人を先頭に、真ん中にリラとわたしをおいてフィア、しんがりがフェリクスさんという順番で中に入ることになった。
岩のすき間、というよりは、人工的に削って作ったように見える細い通路を静かに移動していく。ツタの葉っぱを透かして足元を照らしていた日光が弱くなり、どんどん薄暗さを増していく。
背伸びして前の方を覗くと、さらに暗くなっている前方に大きな石板のようなものが見えている。あれが最初の扉ってことなんだろうな、たぶん。
……ファンタジー系のゲームに理論的ツッコミを入れるのはどうかと思うけど。ああいうの、取っ手とかないのにどうやって開けてるんだろうか。
そんなことをぼんやり考えていた時だ。後ろでフィアメッタが振り返った気配があって、こっそり聞く声がした。
「……フェリクスさん、大丈夫? 見えづらいなら、もう明かり点けとこうか?」
「……え?」
「フィアなんで分かったの!?」
「いや、なんとなくだけど。すり足気味だったから、慎重に歩いてるのかなって」
わたしも相当ビックリしたけど、当の詩人さんはもっと驚いたようだ。白銀の目を丸くする相手に、『あたしちょっとだけ耳がいいらしいから』と、ほっぺをかきながらぽそぽそ返す炎担当である。
実はそのとおりで、このひとは暗いところではほとんど目が利かない体質、という設定だった。夜の時間帯にバトルが始まると、基本ステータスの数値よりも機動力ががくんと下がるのだ。もちろん知ってたし気にしてはいたけど、本人も慣れてるだろうし、あんまり気を遣われると逆に嫌かもしれないと思って様子を見ていたのである。
でも、当の本人はとても嬉しそうだった。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただいてよろしいでしょうか」
「うん、任せといて。エルドおいでー」
『くわーっ』
控えめに鳴いて飛び出した火の鳥が、狭い通路をほんのり紅い光で照らしだした。




