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353/371

限りなく黒に近いグレー④



 とにかくこれ、本人の中で整理がつくまではそっとしておくしかない案件だ。少なくともわたしだったらそうしてもらえるとありがたい。

 「ドゥーさん、こんちゃん、ちょっといい? わたしたち、今からちょっとお出かけするから、このおねーさんのそばにいてくれないかな。出来るだけもふもふしてあげる感じで」

 『ひぽーっ』『こんこん!』

 「……うううう、気持ちいいけどちょっと重い……」

 『くわあ』

 ちょうど起きてきたドゥードゥーと火狐に頼んでみると、すぐさま飛んで行って左右からもふもふし始めた。若干勢いが良すぎたのか、霊獣さんに挟まれたフィアメッタがちょっと呻いている。エルドくんを見るにちょっとうれしそうな気がするので、まあ大丈夫だろう。

 さてと、じゃあ早速報告してくるか。今日中に帰ってこれるといいんだけど。






 何故かわたしが帰ってきた、って知れ渡って以降、地味に続いていた各お邸からの招待ラッシュはいちおう落ち着いて、山の上の公爵邸は静かさを取り戻していた。いつものティールームのガラス戸を開けて中に入ると、すかさずどこかから走ってくる音が聞こえる。おお、早いな。

 「――イブマリーお帰り! そろそろ来るんじゃないかなって思ってたの、みんなもいらっしゃい!」

 「ただいまー、お母さん。相変わらず耳いいね」

 「ご無沙汰しております。お元気そうで何より」

 「うふふふ、二人ともありがと!」

 ぱたぱた、と軽やかな足音とともに現れたのは、やっぱりというかさすがというか、うちのお母さんであるところのユーリさんだった。今日も一児の母とは思えないくらい若々しいし、嬉しそうな笑顔が大変可愛い。

 ただ、ちょっといつもと違うところがあった。ユーリお母さんは髪をアップにするのが苦手で、普段お邸の中ではほぼ下ろしっぱなしなんだけど、今日はきっちり結い上げていたのだ。着ているのは淡い水色のドレスで、襟ぐりからデコルテまでと五分丈の袖が総レースになっててとってもおしゃれだ。あれ、これってもしかして……

 「わあ、ユーリさん綺麗ー! 今からパーティーとか行くの!?」

 「ううん、実は今帰ってきたとこなの。どーしても王都に行かなきゃいけない用事が出来たから、エルと一緒にぱっと行ってとんぼ返り」

 「……あのー、それってまさか、神殿関係とか?」

 「そうそう! あっ、もしかしてマックスから別口で依頼あった? あとで直接話をするとは言ってたけど、早いわね!?」

 「うんそう、まさにそれ。

 でね、ちょっと相談というか、確かめたいことがあるの。帰ってきてすぐで悪いんだけど、お父さんと一緒に聞いてくれないかな?」


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