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オーバーゲート  作者: JUN
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罪人の子

 靴箱の並ぶ昇降口の真正面に貼りだしてあるので嫌でも目に入る席次表を、一応確認する。3年生、1位、霜村鳴海(しもむらなるみ)。900点。よし!物理の教師が「絶対に満点は出さない」というポリシーを持っている人で、誤字でも字の綺麗さでも何でもいいのでマイナスを付けて来るのだ。なので3年生3学期である最終試験では、習字の如くに気を使って答案を書き上げてやった。

 フッ。どうやら、勝ったらしい。

 勝利の余韻に密かに浸りつつ、教室へ行き、窓際にある自分の席に着く。

 見るともなく外を見ると、ひたすら頑丈そうな、大きくそびえたつ門が見えた。

 そう、門。突然世界の数カ所にできた迷宮は、魔素をそこから流し出した。それだけでなく、その迷宮からは魔石や特殊な鉱物、植物が産出され、それは今や我々の生活に欠かせないものとなっている。

 しかしいい事だけでは無かった。そこに住まう魔物と呼ばれる生物を適当に間引いておかないと、それらが外に溢れ出して人々を襲うという現象が確認されている。

 そのほか、漏れ出した魔素は人に蓄積され、少ないながらも「魔術」を使える人が出現している。

 魔素がほかの動物にも蓄積すると、迷宮外の魔物となり、元の動物よりも強いので、早く駆除しないといけなくなる。

 そういう、魔物の駆除や、鉱物、植物の採取をし、迷宮を進んでいくのが探索者で、危険だが一攫千金を狙える職業として人気となっているし、腕のいい探索者はアイドル並みの人気を持っている。

 そして、万が一のためにこの迷宮の入り口を囲ったのがこの門と呼ばれている頑丈な囲いで、迷宮と現実社会とは、この門で隔絶されていた。

 ぼんやりとその門を見ていると、背中に飛びついて来、首に腕を巻き付けて来る奴がいた。この学校に、用事以外で話しかけて来るヤツなど1人しかいない。音無采真(おとなしやすま)だ。

「オッス、鳴海」

「おう」

「成績、鳴海の試験勉強のおかげでどうにか赤点は免れたぞ。いやあ、助かった。流石は、入学以来1位キープだな!オール満点とは流石だなぁ」

 背が高く、運動神経も良く、明るくて社交的なので、友人は多い。しかし、成績はあまりよく無く、考えるより動くタイプだ。

 俺の背は普通くらいで、鍛えてあるとはいえ、見た目は細めだし、采真には負ける。

 そんな俺達のそばにいたグループが、フンと鼻を鳴らす。

「いくら勉強ができてもねえ」

「頼むから、それで事故とか引き起こさないでくれよ」

「お前ら――」

 言いかける采真を、俺は目で止めた。今更だし、こいつらにだけ何か言っても仕方がない。面倒臭いだけだ。

「それより、凄いわ、西村君!柏木伊織(かしわぎいおり)のチームに入れたんでしょ?」

「柏木伊織って、日本の探索者の中じゃ、30位に入る人じゃない!凄いわ、流石西村君ね!」

 女子達に囲まれているのは、西村和人。同じクラスの男子で、成績も運動神経もそこそこ良く、ついでにルックスも良く、モテる。

「まだまだ、新人だよ」

 西村は謙遜してみせるが、それとは裏腹に、表情にも声にも優越感がにじむ。

 探索者になるには免許を取らなければならない。そしてその最低年齢は18歳、高校生だ。

 この学校にも探索者免許を持つ人間はそれなりにいるだろう。何せ、ルールや関連する法律や仕事の仕方をレクチャーするだけの座学を受ければ、ビギナー探索者の誕生だ。原付免許を取る感覚で取れるので、取り敢えず取って、チュートリアル階と呼ばれる地上階だけで少しだけ危険なストレス発散を楽しむ者も少なくはない。

 その中で、ちゃんとその下へ進む本物の探索者は尊敬されるし、有名なチームに入っているというと尚更だ。

「高校を卒業したら本格的に潜ろうと思っているんだけどね」

「頑張ってね、西村君」

 きゃあきゃあと騒ぐ彼女らに、俺と采真は苦笑を浮かべて肩を竦めた。









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