その目が伝えるのは-2
「ええと、綾奈ちゃん、それはどういう意味かしら。」
「用心棒なんて、嫌です。」
「綾奈ちゃん？」
結城も困惑した表情をしている。
「用心棒って、それって、祈里さんわたし達と距離を取るつもりですよね。そんなの嫌です！」
「でも…、綾奈ちゃん怖いでしょう？」
「祈里さんが怖いんじゃ無いんです！あの、手を叩いちゃったのは、本当にごめんなさい！でも、本当に祈里さんが怖いわけではなくて、混乱していたというか、あの。」
「…ありがとう、綾奈ちゃん。」
きっと、この子は、わたしを傷つけてしまったと思っているのだろう。
（…私は大丈夫なのに。）
とても、優しい目をしている。
おそらく、本当に混乱していて、とっさに、私が伸ばした手を振り払ってしまったのだろう。
「ほ、んとにわかってくれてますか。」
「ええ、綾奈ちゃんは優しいわね。」
「そうじゃ無いです！な、何で祈里さんは独りになろうとしているんですか。せっかく、わたし、祈里さんと仲良くなれるかもしれないって思っていたのに。」
仲良くなりたいと思っていたのはわたしだけだったのかと、綾奈は涙目でポツリと溢す。
「確かに、自分から距離を置こうとされるのは、少し辛いな。俺も、上倉さんと仲良くなりたいしな。」
私は前にも、こんなに優しい言葉をかけてもらった事がある気がする。
でも、思い出せない。
何かが足りない。
少し、寂しい。
「あ、りがとう。そんな言葉、かけてもらう事無いから、とても、嬉しい。」
「じゃあ、用心棒なんかじゃなくて、お友達として一緒にいてくれるんですか？」
「ええ。でも、二人のことはちゃんと守らせてね。これだけは譲れないわ。」
「はい…、はい！」
「よかったな、綾奈ちゃん。でも上倉さん、守ってくれるのは嬉しいが、怪我だけはしないでくれ。」
ああ、この二人はきっと、心根がとても優しいのだろう。
心から私の身を心配してくれている。
（目は口程にものを言う、とはよく言ったものね。特に結城くんは、表情が殆ど変わらないけれど、目で何を考えているかがすぐわかる。）
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ、私、こう見えてとっても強いんだから。」
そう言って戯けて見せると、二人の表情が和らぐ。
