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02

 いくら引きこもりといっても食糧は必要なので買い出しには出ざる終えず、感染のリスクはゼロとはいえなかった。掲示板の仲間たちも次第に減少していった。


184:他の掲示板とかはみました?


113:ええ、どこも書き込みが止まっています。


184:海外も?


113:私が見た限りは全て止まっています。


184:僕たちが最後の生き残りってこと?


113:はい。あなたがこの世界の王様です。


184:キミはこの世界の女王だね。


113の書き込みが止まり、しばらく沈黙が続いた。僕はしまったと思った。113がヒトミと呼ばれていることや書き込みが女性言葉だからといってネットの世界では女性とは限らないし、むしろ女性願望のある男性の可能性が高かった。


113:私は王様に忠実なメイドです。


返事が打ち込まれたことに僕は安堵し、笑いをとろうとした。


184:王様の命令は絶対ですよ。


113:はい。


113が僕の話に合わせてきた。


184:じゃあ、


そう書き込んでみたものの続きを書き込むのに僕は躊躇した。


113:ご命令をどうぞ。


世界に二人だけしかいないのなら、もう掲示板のマナー違反も意味がない。


184:僕は佐々木久樹。男性。24歳。君は?


113:井島瞳。18歳。女の子です。


あっさりと返事が返ってきて僕は驚いた。


 彼女には掲示板を通して、何度か相談にのってもらったことがあった。いつも適切なアドバイスをしてくれるので自分より年上だと勝手に思い込んでいた。六つも年下だったのは意外だった。僕が引きこもりでなかったら、彼女みたいな人と恋人になって、結婚して、普通の幸せな生活が過ごせたかもしれない。こんなことになってしまったが、今ならまだやり直せるかもしれない。邪魔者はもうどこにもいないのだから。僕は思い切って書き込んでみた。


184:僕のビデオチャットNO.は4986-5873-5546です。電話をください。


184:これは命令です。王様の命令は絶対です。


ドンリン、ドンリン。ドンリン、ドンリン。


 パソコンのビデオチャットソフトが自動で立ちあがり、着信を告げた。受信ボタンをクリックした瞬間、僕の心臓が和太鼓のように音を立てた。うそだろ。こんなかわいい子がなんで引きこもりなんだ。


「暗くてそちらが良く見えません」


「ちょっとまってください」


僕は慌ててパジャマの襟を直して、髪を整えてから部屋の照明をつけた。


「初めまして。井島瞳です」

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