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「結論から言いましょう。この二体は子供です。本人の記憶から推定して、人間で言えば四歳くらいですかね。当然のことながら、国が欲しがっているような高等科学技術なんて、何も記憶していません」
「そうか。それは残念だ。……で、残りの一体はどうなんだ?」
「あれは小さいやつの父親です。つまりこの宇宙人は親子ということになりますね。子供にせがまれて地球に観光に来て、事故にあったようですね」
「そうか。それで父親のほうの知識は、どうなんだ?」
「これも結論から言えば、国が欲しがっているような情報はまるで持ち合わせていませんでした。この宇宙人の星では、生まれてすぐに適性検査が行なわれて、頭脳労働従事者と肉体労働情事者に完全に分けられます。頭脳労働従事者には子供の頃から大量に知識が与えられますが、肉体労働従事者はそうではありません。一通りの読み書きと簡単な計算。それだけしか与えられないのです。地球で言えば、小学校三年生程度の知識しかなかったんです」
「……でもこの宇宙船は、その父親が操縦していたんだろう。だったら多少なりともなんだかの知識があるんじゃないのか?」
私は椅子から立ち上がった。
「この宇宙船の操縦方法がわかりますか?」
「そんなもの、私にわかるわけがない」
「簡単です。頭の中で命令する。飛べと言えば、飛ぶ。停まれと言えば、停まる。着陸しろと言えば、着陸する。地球に行けと言えば、地球に行く。ただそれだけですよ」
Rは絶句した。
私は宇宙人に目を移した。
――少なくとも生物学的には、なんだかの成果があるかもしれないな。
しかしそれは、私やRには全く関係のない分野なのだ。
終




