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「よお、G.久しぶりだな」
「何があったんですか?」
「記憶を抜き出して欲しい」
Rの言っていることは、すぐに理解した。
私は人間の脳内にある記憶を、特殊なコンピューターにメモリーする研究を続けている。
自分で言うのもなんだが、その道においては世界一であると自負している。
そしてここは秘密の軍事関係施設であり、そのコンピューターが常設しているのだ。
となれば、記憶を抜き出すのは敵対国のエージェントか拘束したどこかのテロリストか。
どちらにしても、ろくでもない奴だ。
人間の脳から無理やり記憶を抜き出すと、相手は間違いなく記憶喪失になる。
その上に、人格障害を起こす可能性が高い。
可能性が高いというよりも、人格障害にならない可能性は、ほぼゼロである。
そうなってしまえばその人物は廃人同様となり、まともなコミュニケーションをとることもできずに、死ぬまで精神病院で暮らすことになるのだ。
だが相手がわが国に害をなすエージェントやテロリストならば、私の良心も痛まないというものだ。
「で、抜き出す奴は、何処にいます?」
「こっちだ」
Rが奥に向かう。
この先にコンピューターがあるからそこに行くのだろう。
私はそう思っていたが、Rはコンピューター室の前を通り過ぎ、更に先へと進んで行った。




