あなたが犯人であることは最初から分かっていました
「探偵さん、いつごろから私が犯人だと?」
「最初からですよ」
「まさか。あの時、この道が渋滞さえしていなければ、私は今頃、海外でバカンスを楽しんでいたはずですよ」
「いいえ、事件現場で会った時から、私はあなたが犯人であると断定していました」
「そんな馬鹿な。この計画殺人は、私が数年の歳月をかけて完成させたものだ。本来だったら、しがない私立探偵のあなたに崩せるわけがなかった。私も、この計画も完璧だった。完璧でなかったのは周りの人間だったんだ。まさか、こんなところで轢き逃げ事件だなんて」
「いえいえ、轢き逃げ事件が起こらなくても、私はあなたが犯人であると分かっていましたよ」
「ええい、鬱陶しい。そんなに言うなら、見せてごらんなさい。私が犯人だと断定出来ていた証拠を」
「それはこれです」
「うん?あなたのスマートフォンがどうかしましたか…って、これは、包丁を持った私ではありませんか。どうしてあなたが、奴を殺害する瞬間の動画を持っているのです?」
「後ろから撮っていましたから」
「動画の再生時間が2時間くらいありますけど、これってもしかして証拠の隠蔽をしたり、ボイスチェンジャー使って警察に脅迫電話かけたりするところも写してあるってことですか」
「ええ、その通りです」
「ええ?どうしてですか?私を止めるなり、逃げるなり、悲鳴を上げるなり、警察を呼ぶなりすればいいのに」
「いえいえ、それじゃあ、あなたに申し訳ないなと思いまして」
「気持ち悪いですね、あなた」
「ええ」