記念すべき一日目
王国歴1315年 5月15日 曇り
今日は俺の八歳の誕生日だ。
今世での父、ヴァレリー・ヴォーヌを始めとした一族はもちろん、血縁や親交のある貴族家を招いて、盛大に祝ってくれるそうだ。
朝から、準備に忙しい。
メイド達が、俺を着せ替え人形にしてキャッキャしている。
母上も、準備の合間に俺の様子を見にきては、あれやこれやと使用人達に指示を出していた。
「我が家は、武門の家柄。あまり華美な飾りは、どうかと思うのですが。」
母上にそう言うと、目を見開いて驚いていた。
まぁ、俺、八歳児だもんな。
直後、デロデロに蕩けるような顔して、なんて賢いんでしょ、とか、流石は私の子、とか、宝石をこれでもかってぐらい嵌めてある金の鞘に収まった短剣を持たされたりとか、とりあえず、黙っている事にした。
いつもの事だ。
チートって、思ったより役に立たないよな。
誕生日会は、とても豪勢だった。
普段は父上の騎士団で扱かれている二人の兄も、今日は貴族の正装をして、出席していた。
俺が三歳になった頃から、屋敷ではあまり見かけなくなったので、少し嬉しい。
前世の記憶があっても、肉親の情と言うやつはあるのだ。
一族の他には、領地を接している貴族家や、国境の守備を任されている貴族など、主に武人系貴族が出席していた。
遠い近いはあるものの、みんな血の繋がりがある。
王都の役人達はアテにできないから、この辺りの貴族達は血の結束で、戦線、つまり国境を維持している。
俺もいずれ、戦場に立つ時が来るだろう。