「俺」
午後13時起床。
部屋の中央を陣取るローテーブルのパソコンの電源は点けっ放しのせいで黄色く点滅している。
そのまま適当なボタンをクリックすれば、ウィイイイインという起動音を立てて目の前に昨日と同じ状態の画面が現れる。
俺は自宅警備員だ。
趣味はネットパトロール、家から半径500メートル以内の近所を徘徊すること。
世界平和をこよなく愛する、人畜無害ないたって普通の人間だ。
そう、ただ働いていないだけで。
俺はこの世界に失望している。
どれだけ働いても同じ賃金、規格外の残業時間、上司のパワーハラスメント、家と会社をただただ往復するだけの日々。
気づけば会社を転々としていた。
しかし何処に行ってもブラックブラック、後ろを見ても前を見てもこれまたブラック。
いつしか履歴書にはびっしりとブラックな文字で埋め尽くされてしまった。
「おたくさぁ、一体何がやりたいの?どうせまたすぐに辞めるんでしょ?」
「ああ、高卒?PCは?資格は?何もないの?じゃー、ちょっと無理かな」
何処へ行っても苦笑い、高笑い、冷笑嘲笑の拍手喝采雨嵐。
よし、死のう!
就活生の間では今練炭と睡眠薬がゲキアツらしい!
しかしそんな勇気もなく今日もパソコンの前に座りながら同じ境遇の者達との傷の舐めあいに甘んじる。
よしよし、俺以外にもニートは沢山いる。とある巨大掲示板の肥溜めのようなスレにへばりつきながら俺は安堵した。
「……む、また地震」
縦に横にぐにゃりと曲がる間隔。
日頃の運動不足などではない。
家が揺れているのだ。
一斉に地震スレが乱立する。
此処、日本国の関東の一地域では最近特に地震が多い。
近々また大震災がくるのではないか、と言われている。
しかし今の技術ではいつくるのかはまだ特定できない。
正直平和主義者だと豪語する俺だが、こんな世界いつ終わってしまっても構わないと思っている。
俺もそのうち物資が途絶えて首をくくる羽目になるのだろうから。
「……ん?」
地震スレを検索していたら、とあるスレを見つけた。
予言します、20××年●月■日にまた大きな地震が来ます。
皆さん避難してください。
新しいスレだったので誰も書き込んでいない。
というか、似たような予言スレが他にも沢山あるせいで誰も書き込まないのだろう。
所謂、釣りだ。
しかし何故か俺はそのスレをクリックした。
それが彼との最初の出会いだった。