説明書
「………。」
「………。」
やっぱり、気になる。
たとえ、机の陰からでも。
「あの……こっち来ませんか?」
話しかけてみる。
しかし、彼女は首を横に振る。
………。
何もすることがない。
………ヒマだ。
ふと、雛菊のほうを見てみる。
なんか、さっきまであった違和感がなくなってる気がした。
彼女は、本を読んでいた。
それも、かなりの厚さの本を。
でもそれ、どこかでみたような…………どこだろう?
……まぁ、いいや。そんなこと、どうでも。
それより、何の本なんだ?
立ち上がって彼女の後ろから、本を覗き込む。
―――――彼の発見は魔法技術そのものを変えた。
以前より魔術発動スピードはUPし、消費HPも大幅に減少した。
よって人々は、より多くの魔術を扱えるようになった。
彼はその後も研究を続け、いくつもの研究成果を発表した。
その中でも、魔物のレベルについての研究は―――――
……はぁ?意味わかんねー。
魔法だの魔物だの、どこの世界だ?っていう……。
そんなの読んでて、おもしれぇのか?
彼女に訊いてみる。
すると彼女はオレがいることに気づいていなかったらしく、おもいっきりビクンと跳ね、オレを見上げた。
彼女はペタンと地面に座っていて---地面には草が生えていて森なのにジメジメとかドロドロとかはしていないため、直接座っても汚れたりはしない---オレは立っていて上から覗き込んでいるからそうなるのだが。
オレを見上げた彼女の頬はほんのり赤くなっていた。
おそらく照れているのだろう。
決して、恋愛感情があるとかそういうことではないと思う。
彼女は誰に対してもそうだから。
クラスでも、仲のいい子はいないみたいだし。
そもそも、友達すらいないんじゃねぇかって思うほどだ。
誰かと一緒にいることすら見たことないし。
「それ、おもしろいんですか?」
もう一度、訊ねる。
なぜか彼女にはオレも敬語になってしまう。
なんか、とっつきにくい雰囲気というか……。
それも、彼女と仲のいいやつができにくい理由だろう。
「おもしろい?……えっと……わかんない」
「じゃあ、なんで読んでるんですか?」
「……えっと……まさか、見てない?……この本。」
そういって、彼女は持っている本を見せる。
『イミャース説明書 地球:日本語ver』
本の表紙にはこんな風に書かれていた。
彼女は本をめくり、1ページ目をオレに見せた。
『あなたは、イミャースへ召喚される一人に選ばれました。
拒否権はありません。絶対に。
例え、拒否した場合も、強制的に召喚します。
これにより、あなたはイミャースで暮らさなければなりません。
イミャースで暮らすということは、イミャースのことについて
いろいろと、知らなくてはなりません。
ここに、ある程度の知識は載せておきましたので
どうかご活用ください。
あなたの無事を祈ります。
B.M. 』
初の1000文字到達!!